
シリーズ第1作目。女優ケイト・ベッキンセイルの冷徹なアクションが見もの。しかも、重厚な世界観と嘘とだましあいのストーリー、そして吸血鬼(バンパイア)と狼男(ライカン)の壮絶な死闘から終始目が離せない。
アンダーワールドの世界が幕を開ける。
《アンダーワールド》作品情報
原題:Underworld
公開年:2003年
製作国:アメリカ
上映時間:121分
監督:レン・ワイズマン
評価:82
《アンダーワールド》の主要登場人物
セリーン(ケイト・ベッキンセイル)
吸血鬼(ヴァンパイア)。
しかも狼男(ライカン)を狩る処刑人。カッコいい。
幼い頃ビクターに命を助けられ人間から吸血鬼になる。本作品の主人公。
マイケル・コーヴィン(スコット・スピードマン)
人間の医学生。最初の不死者アレクサンデル・コルヴィナスの末裔。
ルシアンとセリーンに嚙まれたことにより、ライカンと吸血鬼の混血種になる。
クレイヴン(シェーン・ブローリー)
吸血鬼のリーダー代行。セリーンを愛している。出世欲が強く、ルシアンと内通している。
セリーンが戦士であるのに対して、彼は全く戦えないし、戦ったことが無い情けない奴。文官一筋。
ルシアン(マイケル・シーン)
ライカンのリーダー。妻をビクターに殺され恨んでいる。
クレイヴンを裏で操っている
ビクター(ビル・ナイ)
吸血鬼一族の3長老の一人。最高齢で最強。
《アンダーワールド》のあらすじ
はるか昔のハンガリーにて、一人の男がウイルスに感染し人類初の不老不死となる。そしてその男に3人の息子がでる。一人は蝙蝠に噛まれ吸血鬼(ヴァンパイア)に、もう一人は狼に噛まれ狼男(ライカン)になる。
それから1000年あまりヴァンパイアとライカンとの闘争は圧倒的なヴァンパイア側の勝利で幕を閉じようとしていた。
しかし処刑人セリーンはライカンが追う人間に疑念を抱き、ライカンたちがある陰謀をたくらんでいると予測するも、ヴァンパイアのリーダー、クレイヴンは全く取り合ってくれない。業を煮やしたセリーンはある計画を実行する。
《アンダーワールド》のネタバレ感想
過去から現在に至る世界観がすごい
世界観がおもしろい。アクションダークファンタジーだが、「1000年以上続く物語の上に現在がある」その重厚感が見ていてワクワクしてくる。
吸血鬼と狼男の作品は今まで多くのものが作られてきた。
しかし、このアンダーワールドの新しいところは、吸血鬼と狼男の誕生を神秘的なものとしてではなく、ウイルスによる突然変異としたことにある。
たいていの作品はヴァンパイアの誕生をあいまいなものにしている。ヴァンパイアや狼男は当然はじめから存在しているものとして扱われている。
しかし、この作品ではある未知のウイルスが広まって、多くの人間か死んでしまったがたった一人アレクサンデル・コルヴィナスだけが不老不死となった。そしてアレクサンデルに3人の息子が生まれ一人は蝙蝠に噛まれ吸血鬼に一人は狼に噛まれ狼男になる。残り一人は人間のままでその末裔がマイケル・コーヴィンである。
ヴァンパイアとライカンの長きにわたる闘争もきちんとした理由がある。それも、それ相当の非情な目にあわされたライカンであるルシアン、彼の吸血鬼長老ビクターへの強い復讐心から生まれたのだ。この物語は第三弾の『アンダーワルドビギンズ』で詳しく語られている。
ダークファンタジーを際立だせる色彩
終始作品全体が青を基調とした色合いになっている。
この冷気ただよう深い青の色彩がセリーンの怜悧な顔立ちと相まってより一層ヴァンパイアとライカンのアクションを盛り上げる。
この暗い青の色に染まった細部まで見せない映像が、見ている側の想像力を一層かき立てる。
セリーンのアクション
アクション女優と言えば、肌の露出を大きくしてド派手な動きで演出するものだが、ケイト・ベッキンセイルは違う。
黒い髪と青い目そして黒い体にぴったり張り付いたレザーに同じく黒の大きいマントを身にまとい、無表情にライカンに銃弾を叩き込む。
まさに冷徹な処刑人。敵に一片の情けもかけず、ただ自身の責務を全うすることを信条としているセリーンがかっこいい。
ライカンへ投げつけたあの手裏剣のような高速回転する武器は何だろうか。
ビクターの剣もすごい切れ味だ。
復讐にかられたセリーンの背後から振り下ろした剣は、ビクターの頭を一刀両断していた。
切られたビクターも一瞬自分が切られたことに気付いていなかった。
セリーンが顔の前にかざした剣に着いた血糊を見て初めて気付いたようだ。
セリーンは拳銃に剣にとあらゆる武器に精通しているのだろう。何しろ何百年も闘いに明け暮れてきたのだろうから。
長かったライカンとの闘争もようやく終わりが見えてきた。ライカンを根絶して、ヴァンパイアの勝利が確実になる日がもう目の前に違づいているのだ。今まで戦士としてしか生きてこなかったセリーンは、ライカンがいなくなった世界でどう生きて行けばいいのだろうとふと考えることがある。
裏切りや偽りの上にあるもろい血族関係
世界観と相まってストーリーも面白い。
信頼していたビクターに裏切られるセリーン。父のように信用しきっていたのに、実はビクターが本当の家族を殺した張本人だったとは。 それも血の欲望に負けて。
セリーンは今まで信用しきっていたビクターへの気持ちが、一気に憎むべき敵へと変わる。
ビクターはセリーンが実の娘だったソーニャに瓜二つだったから殺さなかったという。ということは、娘に似ていなかったら、その場で殺していたということだ。
ビクターの言い訳は、「家族を殺したお詫びに不老不死にしてあげた」、とそれで済む話ではない。
不老不死という最高の贈り物を上げたから許されるだろうなどと、なんて独りよがりな考えだろうか。
事実を知ったからには相手が長老だろうがセリーンとしては許しておけるはずがない。
一つ疑問が
バンパイアには女性がいるのに、ライカンには男しかいない。両者とも仲間を増やすときは人間に噛みついて死なない者が仲間になるのだろうか。
しかし、バンパイアは同族どうしなら愛し合ったもいいようだから、その場合子供は生まれ新し仲間が増えるのだろう。
《アンダーワールド》その他の登場人物
ソーニャ
今後のシリーズで知っておいた方が良い登場人物
ヴァンパイア族長老ビクターの娘。ソーニャはルシアンの子を身ごもるが、種族の交配を禁じる種族の掟に厳格な父に、日光の光を浴びせられ殺される。セリーンと瓜二つ。
アメリア卿(ジータ・ゴロッグ)
ヴァンパイア族の3長老の一人。現在目覚めている長老であり今世紀元老院を率いて納めている。
次の長老との引継ぎの儀式「復活祭」の為に、ヴァンパイア族の館へ向かう途中、クレイヴンの裏切りにより殺される。
いくら油断していたとはいえ、長老の一人であるアメリアは成す術もなく元老員たちと共に殺されてしまった。
ドレスアップし貴族然とした容姿の整ったアメリアの闘うシーンも見たかった。
アメリアは蒸気機関で移動してきたから、現代ではないようだ。1830年代から蒸気機関車はイギリスから欧州大陸に広まったから、この作品の時代は1800年代中盤から1900年代にかけてだろう。
ジンゲ(アーウィン・レダー)
ライカンに医師。ルシアンの指示のもと、ヴァンパイアとライカンの交配を研究している。セリーンにヴァンパイアの館に連れてこられたジンゲは、長老ビクターに殺されるがそのライカンの血がしたたり落ち、地下で眠る3人目の長老マーカスの口もとへ。
マーカス
ヴァンパイアの3長老の一人。今回目覚めている長老アメリアに変わり、次の期間長老を務める事になっている。
最後のシーン。
ライカンであるジンゲの血を体内へ取り込んだマーカスが目を開くと、マイケルと同じ黒目だけになっていた。最後の長老がヴァンパイアの掟に背く交配そのものになってしまったのだが、これからどうするのだろうか?
《アンダーワールド》用語解説
ヴァンパイアと狼男の誕生
5世紀初頭のハンガリー。
一人の男アレクサンデル・コルヴィナスがあるウイルスに感染して不老不死を得る。
その不老不死はアレクサンデルの3人の息子の内の二人に遺伝する。
1人は狼に咬まれ狼男になりその後ライカン始祖に、もう一人は蝙蝠に咬まれヴァンパイアの始祖になる。
ヴァンパイア
吸血鬼であり不老不死。太陽の光を浴びなければ死ぬ事はない。
一族の長老は3名。最高齢のビクターにアメリア卿とマーカス。
3名の内一人が目覚めていて1世紀(100年)ごとにヴァンパイア族を治める。
残りの2名はヴァンパイア族の館の地下で、血液も抜かれた状態で200年間眠っている。
長老の交代の儀式は『復活祭』と呼ばれている。
ヴァンパイアとライカンとの種族の交配を禁じる厳格な掟がある。
ライカン
ライカンは狼男が進化したものである。
ヴァンパイアと同じ不老不死。
ライカンのルシアンとビクターの娘ソーニャが恋仲になるまでは、ライカンはヴァンパイアの昼の守護者だった。
なにからヴァンパイアを守っていたのだろうか。
恐らく人間からだろう。不老不死であり、人間の血を求めるヴァンパイアは恐怖の対象だったはずだ。
しかも戦士であれば力も強くとても人間には太刀打ちできない。
しかし、そのヴァンパイアにも弱点ある。太陽の光だ。太陽の光を浴びせれば一瞬で焼き尽くされる。
外へ出られず、昼眠っている間に窓を開け放ち太陽の光を浴びせれば、人間でもヴァンパイアを倒すことが出来る。その昼の時間帯の守りとしてライカンを利用していたのだろう。
守護者と言えば聞こえはいいが、ヴァンパイアはライカンを奴隷扱いしていたようだ。
処刑人(デス・ディーラー)
ライカンを処刑するヴァンパイアの戦士。その代表はセリーン。リーダー代行のクレイヴンは文官。
紫外線弾
対ヴァンパイア用に開発された新しい兵器。
拳銃の弾に、紫外線が込められているので、この弾が当たるとヴァンパイアは致命傷になる。
硝酸銀弾
対ライカン用に開発された新しい兵器。
拳銃の弾の中に硝酸銀が込められている。この弾がライカンにあたると硝酸銀が血液を通して体中に回り死に至る。
《アンダーワールド》のまとめ
何度も言いたくなってしまうが、作りこまれた世界観に魅了されてしまう。
複雑なそれぞれの一族の歴史にワクワクして、テンションも上がる。
そして、そのダークな世界を駆けまわる怜悧な容姿のセリーンのアクション。
「この先セリーンがどうなっていくのか、マイケルとの関係はどうなるのだろうか」ものすごく楽しみだ。