映画《アレクサンドリア》あらすじネタバレ感想:古代ローマ帝国の女性哲学者

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作品情報

原題:Agora
公開年:2009年
製作国:スペイン
上映時間:127分
ジャンル:ドラマ(歴史)
監督:アレハンドロ・アメナーバル
評価:75

紀元前391年のアレクサンドリア図書館でヒュパティアが弟子たちに講義する所から、自身が殺されるまでが描かれている。

何故、女性初の学長まで務めたヒュパティアが、集団による撲殺にまで至ったのか?

主要キャスト

ヒュパティア(レイチェル・ワイズ)
 哲学者。天文学者。

ダオス(マックス・ミンゲラ)
 ヒュパティアに思いを寄せる奴隷。

オレステス(マイケル・ロンズデー)
 ヒュパティアの弟子。

テオン(マイケル・ロンズデー)
 ヒュパティアの父。アレクサンドリア図書館の最後の館長。

ダオス

ヒュパティアの世話をする奴隷で片時も彼女のそばを離れることはない。しかし、奴隷という身分故に、彼の心の底に「怒り」が長い月日をかけて蓄積していた。彼自身、何に対しての怒りであり、不満なのか分からなかっただろう。具体的な対象があるわけではなかった。しかし、ヒュパティアの講義を受けるローマ市民の弟子たちと、奴隷身分の自分とどこが違うのか。外観か?頭の良さか。

ダオスはいつもヒュパティアの一番近くで講義を聞いていた。そのためヒュパティアも気付かぬうちに最も優秀な弟子となっていた。

しかし、どんなに優秀であろうと、ヒュパティアの目にはダオスが下層民の奴隷としか映っていなかった。ダオスが男だということも意識していなかったのだろう。

キリスト教徒がアレクサンドリア図書館を襲撃した際にヒュパティアのもとに遅れて駆け付けたダオスに「愚か者」と叫んだ言葉が決定的となった。

自分の居場所はここではないと、ダオスはキリスト教徒側へ向かった。

この時代のローマ市民は奴隷を持つのが当たり前のことだった。奴隷を一人の人として見ていなかったのだ。ヒュパティアが非情な人というわけではない。ごく普通のローマ市民だった。

オレステス

ヒュパティアの弟子のひとりで、ヒュパティアに求愛するも振られる。そして、彼女のもとを去っていく。

てっきり、彼はこの後ヒュパティアの弟子もやめ、彼女の敵対する人物になっていくのだろう、振られた腹いせに終生恨むのだろうと思ったら、意外な方向へ進んでいった人物。

数年後、エジプトのローマ帝国総督に出世して、幾度となくヒュパティアを助けようとする。まだ彼女を愛していたのだ。今でも彼女は大切な存在なのだ。だったら、地位や名誉も捨てて彼女を守ってほしかった。強大になったキリスト勢力の前に、ローマ高官も成す術がなかった。

オレステスは外面だけのキリスト教徒だったが、ヒュパティアの身に危険が及び彼女を救うために心からキリスト教徒になった。そして、総督の家からヒュパティアを返す時、俺捨てるは護衛の兵士が送り届けると思っていたのだろう。しかし、彼女は護衛を断って一人で外へ出てしまう。一人で帰ったとは知らずに彼女は途中でキリスト教徒に囚われて殺されてしまった。

曲がりなりにもこの地の最高権力者なのに女性一人も守り通すことが出来なかった。彼女が殺されたと聞いたときは、悔やんだことだろう。

ヒュパティア

wikipediaより(チャールズ・ウィリアム・ミッチェル1885年の作品)

最後まで自分の信念を貫いた、高貴な精神を持つ女性。この時代、アレクサンドリアのみにとどまらず、ローマ帝国で最も知恵があり理性を備えた人物だったのだろう。それに美しさも備わっていたと伝えられている。

一般的に女性は理系が苦手と思われている。数学や科学は男性が得意だと。しかし、それは女性が「理系は苦手だ」という思い込みから、敬遠しているだけのようだ。頭の良さは男性も女性もそん色なく、むしろ女性の方が良いという説もある。

ヒュパティアが才能を開花させたのは父が哲学者という恵まれた環境で育ったのと理解があったからだ。父テオンは娘が自分よりも優れているとすぐに気づいたのだろう。

千数百年も前の時代に、女性が偉大な哲学者、数学者として多くの人々に影響を及ぼしたことが驚きだ。女性が働くことはおろか指導者として活躍する人はほとんど存在しない時代だった。

しかし、哲学者でありアレクサンドリア図書館長の娘であるヒュパティアは、多くの弟子を持ち、しかも当時もっともすぐれた哲学者かつ指導者として存在していた。

その彼女が、キリストの主教とローマ帝国総督の争いに巻き込まれ、しまいには魔女と糾弾され殺されてしまう。

なんとも残念で悲しい。

wikipediaより(ジュール・モーリス・ガスパールによるスケッチ)

まとめ

当時の古代ローマ帝国では男社会の中にあって、ヒュパティアの存在は際立っていたと思う。そういう部分ももっと前面に出して演出してほしかった。

ヒュパティアは最後の最後まで、自分の信念を曲げない強い女性だった。信念を曲げるぐらいなら死さえもいとわない、その強さゆえ後世に名が残されたのだろう。

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