映画《ドラキュラZERO》ネタバレ感想:追い詰められたヴラド公爵は魔物にすがるしかなかった

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作品情報

英題:Dracula Untold
公開年:2014年
製作国:アメリカ/イギリス/日本
上映時間:92分
ジャンル:ファンタジー・アクション
監督:ゲイリー・ショア
評価:75

ドラキュラZERO主要キャスト

ヴラド・ドラキュラ(ルーク・エヴァンス)
トランシルヴァニアのワラキア公国君主。「串刺し公」の異名を持つ。

ミレナ(サラ・ガドン)
ヴラドの妻。

メフメト2世(ドミニク・クーパー)
オスマン帝国皇帝

インゲラス(アート・パーキンソン)
ヴラドの息子。

カリグラ(チャールズ・ダンス)
古来のヴァンパイア。悪魔と契約を結んだため、洞窟の閉じ込められた吸血鬼。

ルシアン(ポール・ケイ)
ワラキア公国の修道士。

ハムザ・ベイ(フェルディナンド・キングスリー)
メフメト2世の使者。

おすすめポイント
・ヴラド公爵は何故ドラキュラになったのかが分かる
・ドラキュラとなったヴラド公爵の圧倒的強さが爽快
・戦闘シーンやドラキュラなどのCGが冴えわたる

事前に知っておいた方がいい知識(一般的なドラキュラ)
・ドラキュラは太陽、聖水、銀に弱い
・ドラキュラは蝙蝠(こうもり)をしもべにする
・ドラキュラは心臓に杭を打ち込まれると死ぬ

事前に知っておいた方が良い知識(今作のドラキュラ)
【ドラキュラになると】
・百人の男の力と流星のごとき速さそして夜とその獣たちを支配出来きる
・彼らの目と耳を手に入れることが出来る
・ただし永遠に人間の血の渇望に襲われる

ドラキュラZEROあらすじ

かつてオスマン帝国の従属国であったワラキア公国は服従の証として100人の少年を献上した。その中には当時王の息子であり後のヴラド公爵も含まれていた。オスマン帝国にてヴラド公は目覚ましい活躍を見せ、その褒賞として祖国への帰還を許される。祖国へ帰ったヴラド公爵は今までの行いを悔い、民を大事にする名君主となる。ところが、再びオスマン帝国から今度は1000人の少年を差し出せとの使者がやってくる。しかもその奴隷の中に息子インゲラスも含めよと。苦悩するヴラド公爵はオスマン帝国からインゲラスを引き取りに来た使者を殺戮してしまう。

ドラキュラZERO感想

家族思いで、国民を愛するヴラド公爵がなぜドラキュラになったのか。

そこにはやむに已まれぬヴラド公爵の苦渋の決断があった。

ヴラド公爵は子供のころ、人質同然に兵士として大国オスマン帝国へ行かされ、成長するにつれた活躍するに至る。

祖国に帰還後は、美しい妻をめとり、子供にも恵まれ、国民に慕われる幸せな日々を過ごしていたが、またしてもオスマン帝国からの理不尽な要求を突きつけられる。

なんと、兵士として育てる為に1000人の少年を寄こせと言う。

なんて無茶な要求。ヴラド公爵が少年の時に要求されたのは100人だった。それが10倍の人数に増えている。

斥候がヴラド公爵の軍に殺されたと思い込んでいる、オスマン帝国側のあからさまな嫌がらせだ。

オスマン帝国の斥候が行方不明になり、ワラキア公国が関わっていると疑われたためだ。

ここで、ヴラド公爵は重大な決断を迫られる。

大公の息子を含む1000人の少年を差し出すか、要求を拒絶してオスマン帝国と戦争になるか。

仮に1000人の少年を差し出せば、将来の若者は激減し国の発展は望めないが国が存続することは出来る。

一方、要求を拒絶すればオスマン帝国は大軍を持って公国に攻め入っていってくるであろう。その時、公国は滅亡するかもしれない。

窮地に追い込まれたヴラド公爵は家臣の助言に従って、息子を帝国へ差し出すことを決断する。

しかし、必死で止める妻のミレナの訴えに剣を抜こうとするヴラド公爵を止めたのがけなげにも息子だった。息子は「自分がオスマン帝国へ行くという。かつて父が帝国へ行ったように自分も行くという」なんていい子だ。父の苦境を分かって、子供にもかかわらず自分が帝国へ行かなかった場合の公国の行く末を分かっていたのだ。

一方、妻のミレナは公国の行く末よりも息子を失うことの方がいやだったようだ。ミレナは君主の妻でありながら息子第一で国民はどうなってもいいという感じだ。

しかし、ヴラド公爵は息子が「自分が身代わりになれば父も苦しまなくて済む」と思っているのが不憫で、しかもそこへ帝国の使者ハムザが無礼な言葉を吐いたために、ついには使者を切り殺してしまう。

このあたりのヴラド公爵の心の葛藤はうまく表現されているのだが、帝国に反旗を翻した理由としては少し弱いように思う。息子を帝国に差し出しても、自分がそうだったように生きて帰ってくる可能性はある。しかし、帝国に歯向かったら、公国そのものが消滅する可能性が高い。公国の国民が殺されるということだ。帝国に歯向かうほどのそれなりの理由付けが欲しかった。

民衆に理解してもらえないヴラド公爵の心の内

ドラキュラだとばれないように太陽を避けるヴラド公爵だったが、ついには民衆にばれてしまう。国民を救うために身を犠牲にしたヴラド公爵だったが、無情な民衆の仕打ちに心が打ち砕かれる。これほどつらいことはない。民衆のためにやって来たことの結果がこれかと。ドラキュラを恐れる気持ちは分かるが、しかし自分たちの君主だ。自分たちが危害を加えられているのではない。未知の凶悪な化け物と分かれば、たとえ君主であっても恩人であっても生かしておくことは出来ないのだろう。民衆はヴラド公爵を家ごと焼き殺そうとした。

塔から落下するミレナを助けようと手を伸ばすも・・・

落下するミレナを助けようと手を伸ばすが後ほんの少し届かず、ミレナは地面に打ち付けられる。瀕死のミレナが息子を救うためヴラド大公に自分の血を飲むよう促す。はじめは拒絶する大公だったが、死に瀕しての妻の訴えについにミレナの首筋に牙を立てる。

後ほんのわずか我慢すれば、ドラキュラから解放される所だった。約束の3日間、血への渇望に耐えてきたヴラド公爵だったが、死ぬ間際のミレナの願いをかなえる為、ドラキュラとなった。あまりにも悲しすぎる。これで人間に戻ることは出来なくなった。

ドラキュラZEROキャスト

串刺し公と恐れられたヴラド公爵の真意

ヴラド公爵は家族を愛し、民衆の幸せを願う平和愛好家だ。

しかし子供のころは自分がオスマン帝国へ差し出され、串刺公と恐れられるほど活躍したようだ。殺した敵の数は千人単位。しかもただ殺しただけではなく、串刺しにして戦場に打ち立てるという悪魔のような所業を行った。

現在の大公からは想像もできない。その理由がまたヴラド公爵らしい。この残酷な行為は、敵に悪魔のように恐れられれば、今後歯向かってくることはないからだという。

なるほど、そういう見方もできるのか。敵からしてみれば、戦場に死体が串刺しにされているのを見れば、さすがに怖気づくだろう。あのような悪魔にたてつくのは無謀極まりないと考えるだろう。

野望に燃えるオスマン帝国皇帝メフメト2世

もうちょっと嫌な奴にした方がよかったのでは。

ヴラド公爵がオスマン帝国に来た時から兄弟のように戦場で戦った仲だ。だから気心が知れているはずだったが、どうも現在は違うようだ。メフメト2世はヴラド公爵を帝国拡大のための駒の一つとしか見ていないようだ。

であれば、もっといやらしい奴になってほしかった。ワラキア公国に理不尽な難題を要求して、我慢に我慢を重ねてきたヴラド公爵がついに堪忍袋の緒が切れて帝国にたてつくというように。

古来のドラキュラ

この古来のドラキュラは制約が多すぎて、自由に洞窟から出て動き回ることが出来ないようだ。ドラキュラとなり尋常ならざる力と引き換えに悪魔とある契約したからだという。

このあたりがどうもわかりにくい。どういった取引をしたのだろう。ヴラド公爵が3日間の間に人間の血を飲めばヴラド公ドラキュラとなり、この古来のドラキュラ、カリグラは何になるのだろう。ラストでは現代を舞台に「ゲームの始まりだ」と言っていた。これも訳が分からん。

ドラキュラZERO演出

ゲームのような戦闘シーン

ドラキュラとなったヴラド公爵の戦い方が凄まじい。公爵の通った後には無数の死体が横たわる。まるでゲームのようだ。ゲームの主人公よりも強い。なんといっても自分はドラキュラだから周りは雑魚ばかりだ。倒して倒して2千人の軍を一人で全滅に追いやってしまった。ある種の爽快感がある。

蝙蝠の集団に包まれて移動

ドラキュラとなったヴラド公爵が移動するのに、無数の蝙蝠に包まれて飛んでいるようだが、あれは蝙蝠に運ばれているということなのだろうか。てっきり、背中に大きな黒い翼が生えて飛ぶのだと思っていたのだが。ポスターやチラシの黒い翼は蝙蝠の集団のようだ。

ドラキュラZEROまとめ

ラストでは、オスマン帝国に蹂躙された祖国でかろうじて生き残っていた民衆に自分の血を飲ませてドラキュラ化させる。

そして、帝国軍を全滅させた後は、ドラキュラ化した民衆たちが今後血に飢えた怪物と化していくことに耐えられなくなったヴラド公爵は、超絶的な力で空の厚い雲を追い払い、太陽の光でドラキュラ化した民衆と共に自身も灰と化そうとする。

自分だけが生き残り、他のドラキュラは灰と化した。いいように利用しただけように見えるのだが。

作品全体としては結構面白かった。

追記

でもちょっと待って、『ドラキュラZERO』とあるからには、ドラキュラの起源が明らかになると大いに期待して見ていたのだが、ヴラド公爵は洞窟にいたカリギュラの血を飲んでドラキュラになっていた。ということはカリギュラが吸血鬼になった過程を作品化した映画が真の『ドラキュラZERO』ではないんかい。

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