映画《グラディエーター》ネタバレ感想:農民出身の一人の男がローマ帝国皇帝コモドゥス帝を・・・

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《グラディエーター》作品情報

原題:Gladiator
公開年:2000年
製作国:アメリカ
上映時間:155分
監督:リドリー・スコット
評価:85

《グラディエーター》あらすじ

平民出身の将軍マキシマスは蛮族との決戦をむかえていた。

マキシマスのカリスマ性により軍の士気は最高潮に高まり、しかも彼自ら騎馬隊を率いて敵陣の後方から攻め込み敵の意表を突きローマ軍を勝利へと導く。

その戦闘をを高台から見ていたローマ皇帝アウレリウスは、自身の後継者として息子のコモドゥスではなくマキシマスにする決意を固める。

戦闘が終わってから到着したコモドゥスに、皇帝アウレリウスは次の皇帝は息子のお前ではなくアウレリウス二すると告げる。動揺し、絶望したコモドゥスは父アウレリウスを殺害する。

即座に父の崩御のあと、皇帝を名乗るコモドゥスだが側近としてこれから協力してくれるようアウレリウスに頼むも、明らかに不自然かつ突然の皇帝の死がコモドゥスによるものだと一瞬にして悟る。

コモドゥスは自分に従わないマキシマスと彼の家族の処刑を命じた。アウレリウスは家族を助ける為、処刑される寸前相手のスキをついて全員殺害、替え馬1頭と連れて不眠不休で家族の待つ故郷へと向かう。なんとしても、家族の処刑を命じられた騎士たちより先に着かなければならない。果たして間に合うのだろうか。

《グラディエーター》主要キャスト

ローマ帝国

マキシマス・デシムス・メリディアス(演:ラッセル・クロウ)
 主人公。ローマ軍の将軍で、属州ヒスパニア(スペイン)出身。
 皇帝アウレリウスに気に入られるが、アウレリウス亡きあと次の皇帝コモドゥスから処刑宣告を受ける。

ルキウス・アウレリウス・コモドゥス(演:ホアキン・フェニックス)
第17代ローマ皇帝(在位180-192年)
アウレリウス帝の嫡男。実の子である自分より旧友マキシマスを信頼する父への屈折した感情から、父を殺害する。
そしてマキシマスとその家族の処刑を命ずる。

ルッシラ(演:コニー・ニールセン)
コモドゥスの姉。若い時はマキシマスの恋人だったが、身分の差から結婚を諦めマルクス・アウレリウスの共同皇帝ルキウス・ウェルスと結婚する。

ルキウス・ウェルス(演:スペンサー・トリート・クラーク)
ルッシラの子。コモドゥスの甥。父はマキシマスの共同皇帝。
父と同じ名を継いだ
父は、アウレリウスと共同皇帝である、同盟のルキウス・ウェルス。

マルクス・アウレリウス(演:リチャード・ハリス)
第16代ローマ皇帝(在位:161-180年)。賢帝と称えられた皇帝で、映画の冒頭では『マルコマンに戦争』に自ら出陣している。
帝政に限界を感じており、後をマキシマスに託して共和制のローマに戻そうと考えるが、実の子コモドゥスに暗殺される。

クィントゥス(演:トーマス・アラナ)
ローマ軍の将軍。マキシマスの同僚だったが、彼を裏切りコモドゥスに従いマキシマスを捕える。
その功績により近衛隊長になるが、マキシマスを裏切ったことに罪悪感を持っている。

グラックス議員(演:デレク・ジャコビ)
元老院議員。高潔な性格の持ち主。コモドゥスの独裁を押しとどめようとする。

ガイウス議員(演:ジョン・ジュラブネル)
元老院議員。ローマ共和制復活を願い、グラックスと共に反コモドゥス派として立つ。

ファルコ議員(演:デヴィッド・スコフィールド)
元老院議員。没落したパトリキ議員で、コモドゥスに取り入り権勢を誇る策謀家。

シセロ(演:トミー・フラナガン)
マキシマスの従者。マキシマスが剣闘士になっても後を追い続け、密かに彼を助ける。

剣闘士

アントニウス・プロキシモ(演:オリヴァー・リード)
ズッカバルを根城にする剣闘士団の団長。マキシマスの才覚を見出し、剣闘士としての修行を積ませる。
かつては自信も剣闘士だったが、活躍した功績からアウレリウス帝によって自由を与えられた。

ジュバ(演:ジャイモン・フランスー)
ヌミディア人の奴隷。マキシマスと共にプロキシモへ剣道史として売り飛ばられる。
マキシマスと友情を結ぶ。

ハーゲン(演;ラルフ・メラー)
ゲルマニア人の奴隷。冗談好きの大男。先輩剣闘士としてマキシマスとジュバを指導する。

《グラディエーター》ネタバレ感想

勝利の歓喜

対ゲルマニア戦争

パクス・ロマーナ(ローマの平和)が終わりへと向かう、五賢帝最後の皇帝マルクス・アウレリウスの時代。
将軍マキシマスはゲルマニアとの戦争で大勝利を収める。

マキシマスは軍団の兵士全てから好かれ、信頼されている。長い年月の中で生死を共にして来た絆の表れなのだろう。

マキシマスは元は農民だ。貴族ではなく、イタリア本土の市民でもない。属州であるスペインの農民だ。一兵士から将軍にまで上り詰めたずば抜けた用兵の才能を持つ農民だ。彼の望みは早く戦争を終わらせて、家族の待つ故郷で幸せに暮らすことだ。マキシマスは故郷に帰る日を夢見て長い戦いの日々を耐えてきた。

怒り

皇帝暗殺

コモドゥスの怒り。父親であるアウレリウス帝は息子である自分より将軍マキシマスを信頼し息子のように愛していたのだという事を知り、激しい怒りと憎悪から父を窒息死させる。

しかも、周囲の全ての人がアウレリウス帝を殺したのはコモドゥスと気付いていながら、マキシマス以外は誰一人として糾弾しようとせず、次の後継者として認める行動をとる。

自分へ忠誠を誓わないマキシマス対して、嫉妬を憎悪を抱き彼の処刑を命じる。

コモドゥスに次ぐひどい奴は、長年マキシマスの部下だった、クィントゥスだ。自分の身可愛さに、マキシマスを裏切り、コモドゥスに早々と忠誠を誓い、近衛隊長に収まった奴だ。

しかも彼はコモドゥスの命に従い、マキシマスの処刑とスペインの故郷にいる彼の妻子の処刑まで命じている。

何とか処刑を逃れたマキシマスは、近衛兵と闘った際左肩を切られて、2頭の馬を連れて妻子の待つ故郷へ必死で向かう。なんとしても、妻子の命を奪うために派遣された一団より先に着かなければならない。

しかし、あと一歩遅く、マキシマスが故郷に着いたときには変わり果てた妻と子の姿だった。長年再会を夢見ていた、愛する妻と子が焼かれて吊るされている姿を見なければならないとは、なんて残酷で非情な仕打ちだろう。

一体マキシマスが何をしたというのだろう。亡き皇帝アウレリウスに気に入られたことにより、その息子コモドゥスの嫉妬を招き、自分が殺されそうになり、妻と子は殺される。

長年、ローマの為に命をかけて闘ってきた将軍マキシマスへのあまりにもむごい仕打ちだ。

絶望と無気力

妻と息子を惨殺された、マキシマスは生きる気力を失っていた。死にかけていた彼はたまたま通りかかった奴隷商に拾われ、スペイン南部の剣闘士団へ売られる。

驚くことに、奴隷商は物を拾うように、その辺に野垂れ死にしそうな人を拾って奴隷にしてしまうようだ。奴隷になるのは、「借金を返せなくなった人や戦争で負けた国の人々」と聞いたことがあるが、本人の意思は関係なく、抵抗できない人は誰でも彼でも奴隷にしていたのだろうか?

マキシマスが左肩に書いてある「SPQR」のの文字を傷をつけて必死で消しているシーンがある。

ただ一つの願望

コモドゥスを自らの手で殺すこと。

剣闘士を続けていれば、皇帝に会う機会が訪れるを分かり、それ以降生き残るために、自分の経験を生かした戦いをはじめ、負け知らずとなる。ローマ軍を率いていた将軍に勝てるものなど、果たしているだろうか?

復讐の好機はコモドゥス帝の甥ルキウスが皇帝の傍らにいたことでその機会を逃した。しかもこの時、自らの小隊がコモドゥス帝にばれてしまう。殺したはずのマキシマスが生きていたと。ならば、今この場で処刑してしまおうと考えた皇帝だが、コロッセオの観衆が強いマキシマスを支持したことで、やむなく処刑することを断念する。

コモドゥス帝に復讐を誓ったマキシマスは、卑怯な戦いであっても、それをものともせず勝ち残っていく。

安らぎへ

妻と子の待つところへ

0コモドゥス帝はマキシマスの人気を自分自身への人気に変えるために、自分が市民の前でマキシマスを殺すことしかないと結論付ける。しかも、同じ土俵の上で誰が見ても皇帝の方が強いという事を強烈に印象付けた形での勝利でなければならない。

そのために弄した策が、事前にマキシマスを負傷させておくことだった。なんて卑劣な、でもそこましないとあのマキシマスには勝てないだろう。いや、そこまでしても勝てなかったのだが。

負傷したマキシマスとコモドゥス帝は始めこそ互角に戦っているように見えたが、次第にコモドゥス帝は動きが遅いマキシマスに押され気味になり、しまいには自らの剣を落としてしまう。周囲を囲んでいる近衛兵に剣を寄こせと叫ぶも、近衛隊長による命令でどの近衛兵も剣を貸してくれない。

コモドゥス帝は近衛兵にも見捨てられた。

周囲を囲む近衛兵は、コモドゥス帝が有利になるように、マキシマスを生かしてこの場から出さないために、いるのだと思っていたが、実はそうではなかった。

コモドゥス帝は自分の勝利を大勢の市民が見守る中で盛大の見せつけるつもりだった。しかし、すでに市民を含めて誰一人味方するものがいない中で、卑劣な手段で負傷しているマキシマスだが、それでも互角の勝負にこだわって、自らの剣を投げ捨てて、素手で戦いに挑もうとする。しかしコモドゥス帝は最後の最後まで卑劣だ。袖の中に短剣を隠し持っていた。

その卑劣で卑怯な考えと行動が、市民から嫌われる原因だという事に、本人は気付いてない。そんな卑怯な方法で勝ったとしても、誰も認めてはくれないだろう。余計嫌悪されるだけだ。

マキシマスはコモドゥス帝が隠し持っていた短剣で、とうとう妻子の復讐を果たす。しかし、試合前から傷を負っていたマキシマスはついに力尽きて息を引き取る。

ようやく、妻子が待つところへ行くことが出来た。

ローマの英雄の遺体を運びたいと希望する者が大勢名乗りを上げる一方、闘技場に置き去りにされたコモドゥス帝の亡骸、この両極端な最期が二人のこれまで歩んできた生き様を象徴しているようだ。

コモドゥス帝はマキシマスを憎み、如何にしたら市民の人気を勝ち取れるかばかり気にしている。ローマの最高指導者でありながら、ローマ市民が幸福に生きていくことはこれっぽっちも考えていない。

一方、マキシマスは自分の軍の兵士ひとりひとりの事を心配し、尊敬する元皇帝アウレリウスの意志を尊重したいと考えていた。自分を助けてくれた仲間や、信頼してくれる人を裏切るようなことは絶対にしない。

作品の補足情報

マキシマス

歴史家ヘロディアヌスカッシウス・ディオといった同時代人は剣闘士ナルソキッソスがコモドゥス帝を暗殺したと記している。しかし、ナルソキッソスの記録が少ないため様々な歴史上の人物の逸話が加えられて、この作品の主人公将軍マキシマスが作られた。

ヘロディアヌス(170頃-240頃)
古代ローマの歴史家。属州シリア出身の役人として帝政ローマ中期に活躍した。
マルクス・アウレリウス・アントニヌス帝の死から始まる同時代史『マルクス帝没後のローマ史』を書き記した。

カッシウス・ディオ(155or163or164-229年以降)
ローマ帝国の政治家、歴史家。
元老院議員を務め、執政官、総督などを歴任した上級貴族。
神話の時代からアレクサンデル・セウェルス帝即位までの歴史を記した80巻からなる『ローマ史』を22年間かけて執筆した。歴史学上の1級資料として扱われている。

ルキウス・アウレリウス・コモドゥス

皇帝の息子という事もあり、5歳で副帝となる。16歳で父と共同皇帝となり、史上最年少で執政官となる。
17歳で貴族ブルッティア・クリスピナと結婚。21歳の時、姉ルッキラに暗殺されそうになる。
31歳の時親衛隊に暗殺される。元老院よりダムナティオ・メモリアエ(名誉の抹殺)に処せられる。

ダムナティオ・メモリアエ
元老院から反逆者と認定された人物に対して行われた。これまでの存在そのものが無かったこととして扱われる。その人物の記録と記憶を抹殺する。

実在したコモドゥス帝もひどい皇帝だったのだろう。よほど腕に自信があったのだろうが、自ら剣闘士として闘技場に立ったようだ。

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