映画《グラン・トリノ》作品情報
原題:Gran Torino
製作国:アメリカ
製作年:2008年
上映時間:117分
監督:クリント・イーストウッド
評価;78
映画《グラン・トリノ》主要キャスト
ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッ)
朝鮮戦争への従軍経験があり、妻に先立たれ、息子たちとも疎遠。
タオ・ロー(ビー・ヴァン)
ウォルトの隣に住む少年。
スー・ロー(アーニー・ハー)
タオの姉。
映画《グラン・トリノ》あらすじ
ウォルト(クリント・イーストウッド)の頑固さは筋金入りだ。毎日不機嫌で気難しい顔をしている。
妻の葬儀でも苦虫を嚙み潰したような表情で、訪れた人々を見ている。二人の息子はそれぞれ独立し一家を構えているが、心を通わせられない父の所にはほとんど寄り付こうとしない。息子夫婦は独り者になった父を施設へ入れて、実家を売りに出そうをするが父の返り討ちにあう。
そんな時、隣に住むアジア人一家の青年タオが、ウォルトの愛車『グラン・トリノ』を盗もうとする。タオは悪い、いとこグループにそそのかされて盗みに入ったが未遂に終わる。タオは根は悪いわけではないが、おとなしいく自己主張ができない。いつも、姉のスーの言うことを聞いて庭いじりをやっている。
自分のやりたいことを見つけられずにいるタオをウォルトが何とか一人前の男にしようと決断する。
しかし、いとこのタオへのちょっかいがエスカレートして、懲らしめようとしたウォルトの行動が裏目にでて、スーが暴行され、レイプされてしう。
タオは姉の仇を打つため、いとこたちの所へすぐにも乗り込もうとするのだが、自分がまいた種からタオの未来のことを思ってウォルトはある決断する。
映画《グラン・トリノ》感想
朝鮮戦争へ従軍し、敵を殺したことのあるウォルトはそのことが、終始頭から離れず心底、心が晴れることがないのだろう。その時、殺した敵兵がタオを同年代だったというから、当時の若者と現代の若者を比べて、余計にふがいない今の若者を見て不愉快なるのかもしれない。
孫娘のへそのピアスや素行の悪さなど、現代の若者にとっては普通のことでも融通の利かない頑固なウォルトには目に余るものがあるのだろう。
そんな時、タオという青年と出会った。タオは一見おとなしく知能が遅れているのではないかと思えるほどいつもボーといるが、姉のスーが言うには頭がいいらしい。
そんなとき、ウォルトは大量の荷物を落として困っている人を自然と助けているタオの姿を偶然見かけ彼への見方が変わる。
ウォルトは一見頑固で偏屈そうに見えるが、まじめで曲がったことが嫌いな老人なだけだ。タオのやさしい人柄や、スーの物おじしない行動力に好感も持ち始めたが、タオ、とスーを助けたことが逆に仇になって窮地に追い込まれる結果となる。
何故ここまで、エスカレートしてしまったのか。ウォルトの頑固さ故、警察へは一切助けを求めようとはしなかった。神学校出たての若い神父はいるが暴力に訴えてくる彼らを抑えられるとも思えない。
銃の国アメリカ人の例にもれずウォルトも銃を持ち歩いている。相手が持ているので自衛のためこっちも銃を持たざる負えない。お互い銃を持っているとわかっていると、先に撃たないこっちがやられてしまう。であれば先手必勝ということでやられる前にやる、という、話し合いも何もあったものじゃない社会が出来上がってしまう。
この作品には二つの対立がある。ウォルトと息子の対立。タオとウォルト対従弟のグループ。どちらも、お互いの会話がないまま進行してしまいどんどんこじれてしまった。どこかのタイミングでどちらかが譲歩すれば、ここまで悪化することもなかったのではと思ってしまう。対立は相手への理解不足から起こる。相手の事情、今の状況に至ってしまった理由が必ずあるはずだから、それを理解することによって相手への怒りの感情も随分緩和されると思うのだが。
ラストの自分の命をかけ大切なものを守り抜いた男の生き様に感動。
年の離れたウォルトはタオにとって生涯忘れなれない親友として心の中で生き続けるだろう。