《ハドソン川の奇跡》作品情報
原題:Sully
公開年:2016年
製作国:アメリカ
上映時間:96分
出演:トム・ハンクス
監督:クリント・イーストウッド
評価:80
《ハドソン川の奇跡》あらすじ
旅客機USエアウエイズ1549便は離陸直後、鳥の集団に入り込む。この時エンジンに鳥が吸い込まれ両翼のエンジンが停止。浮力が維持できず徐々に降下していく。
管制塔は空港へ引き返すことを再三告げるが、パイロットのチェスリー・サレンバーガー(通称サリー)はハドソン川へ不時着水することを決断する。
42年間のキャリアから導き出された最善の策がハドソン川への着水だった。しかし、その時誰もが生存の可能性はゼロだと確信した。
《ハドソン川の奇跡》ネタバレ感想
サリーが怪しく見える演出
冒頭、いきなり旅客機がビルに激突する。飛行機事故のシーンからスタートかと思いきや、これはパイロットである主人公、サリーの夢のシーン。しかもこのシーンがたびたび登場するし、ランニング中にはぼーとしていて車の前に飛び出てしまうし、目がうつろだったりとこれはサリーに持病でもあるのではないかと勘ぐってしまう。
もしくは奥さんとの不仲とか、離婚間近とか。いろいろ想像してしまうが、実はいずれもマスコミに四六時中付きまとわれ、しかも自身の下した判断に疑いが持たれたことによるストレスだったようだ。
見ている視聴者にサリーへの疑いの目を向ける演出のようだが、本当に疑ってしまった。しかも副操縦士もだんだん怪しく見えてきて、何か隠しているのではとあらぬ疑いを持ってしまった。
サリーも副操縦士も人一倍責任感が強く、特にサリーは最後の最後まで取り残された乗客がいないか、沈みそうな機内を見て回る彼姿を見ればサリーがパイロットという仕事に強い責任感と誇りを持ってるのは一目瞭然だ。
キャリア42年のパイロットvs国家安全運輸委員会
ハドソン川に不時着水し、しかも乗員、乗員全員無事という快挙を成し遂げたアメリカの英雄サリーに疑惑が持ち上がる。「ハドソン川に不時着水しなくても空港に戻れたのではないか」、「乗員乗客をわざわざ危険にさらしたのではないか」というものだ。
NTSB(国家安全運輸委員会)が当時の機体の状態及び不時着水した時間を解析した結果から導き出された結論だ。
真の事故原因を突き止めるのは、結果が保険金額に影響するため公平公正さが求められるし、誰もが納得する証拠を提示する必要がある。その場合、コンピューターによる結果がまず重要視されるようだ。
そして、サリーは公聴会で自分たちの下した判断が正しかったと証明しなければならなくなる。
ここでの争点はサリーの下した判断が誤りだったのか、それとも正しかったのかが争点になる。
元の空港へ引き返すかもしくは最寄りの空港へ着陸する時間があったのか、それともハドソン川へ不時着水しなければ墜落していたのか。
ここでサリーが気付いたのは「タイミング」。
コンピューターと人間とのタイミングの差。
後からコンピューターで検証する場合と実際の現場とは全く違うということだ。
シュミレーションは確かに忠実に当時の状況を再現しているが、一つだけ足りないものがあった。「人的要因」。サリーは事故時、初めての状況のなか最善の方法を捜して即座に決断しなければならない。しかし、コンピュータではないので42年間パイロットをしているサリーでも決断までのライムラグがある。このタイムラグがシュミレーションでは見落とされていた。しかもシュミレーションをしたパイロットは17回も事前に練習していたという。それでは現実と同じ状況にはならないだろう。
鳥がエンジンに吸い込まれてからハドソン川に不時着水までの時間はわずかしかないのだから、ほんの数秒のタイムラグでも違ってくるだろう。
公聴会でシュミレーションの時間を35秒遅らせてスタートすると墜落の結果が出た。ようやくサリーはすべての人に英雄と認められた瞬間だ。
《ハドソン川の奇跡》まとめ
何事も後から他人が検証すると、どうしてもデータだけに頼ってしまう。もちろん当事者の嘘を見抜くためにデータを活用することは必要だ。しかしあまりデータに頼り過ぎてしまうと、今回のように誤った方向へ進んでしまう。事件や事故に本来かかわっているのはコンピューターではなく人間なのだから。