作品情報
原題:Hancock
公開年:2008年
製作国:アメリカ
上映時間:92分
監督:ピーター・バーグ
評価:80
映画《ハンコック》主要キャスト
ジョン・ハンコック(ウィル・スミス)
超人的能力をもつが、その力を生かし切れていない主人公。
メアリー・エンブリー(シャーリーズ・セロン)
レイが連れてきたハンコックを相当嫌っている。
レイ・エンブリー(ジェイソン・ベイトマン)
ハンコックに命を救われる。メアリーの夫。
アーロン・エンブリー(ジェイ・ヘッド)
レイの息子。
映画《ハンコック)あらすじ
超人的能力をもつハンコックだが、毎日酒浸りで子供からも「クズ」呼ばわりされるどうしようもない毎日を送っていた。犯罪が起きると一応現場に駆け付け、犯罪者を捕まえるのだが、その際全く周囲に気を使わない。そのため道路は陥没、ビルは破壊され、水道管も破裂する。ハンコックが活躍したそのあとの被害額が莫大なものになっていた。警察からの召喚状はすべて無視。住民からは見捨てられた超人になり果てていた。
そんな時、一人の男性レイを列車事故から救出したことがきっかけで、事態が好転する。レイはお礼にハンコックをみんなから慕わるる、ヒーローに変えようとある作戦を立てる。ハンコックがおとなしく刑務所に入れば、その間町では犯罪が急増する。そして警察はたまりかねてハンコックに援助を求めてくると。半信半疑のハンコックだったが、住民から見下げられている今の境遇からなんとか抜けだしたいとその作戦に乗ることにする。
映画《ハンコック》感想
ハンコック
空を自在に飛べ、怪力の持ち主で、敵の銃弾をも跳ね返す、とスーパーヒーローそのものだが残念ながら彼はそうじゃない。
毎日酒瓶片手に飲んだくれている始末で、街の子供からも「クズ」と蔑まれている。
ハンコックは自分がなぜ非難されているのかわかっているのだろうか。レイに言われて初めて道路やビルを壊さずに自分の力を使い始めたようだが、やろうと思えばいつだってパワーの制御は出来たみたいだ。
なぜ今までそうしなかったのだろう。せっかく犯罪者を捕まえても、逆に非難されたのでは嫌気がさすのも当たり前だ。
せっかく誰もが持っていない、誰もがうらやむ能力をもっていながらそれを生かし切れていない不器用な生き方しかできないようだ。
80年前、病室で目覚めたときからの記憶しかなく、それ以前の事は何も覚えていない。彼は当時事件に巻き込まれて頭を強く打った衝撃で、今のような超人的な体になったと思い込んでいる。
孤独で、愛情に飢え、酒に逃げていた時にたまたま助けたレイの助言に従って、ようやく事態が好転し始める。
メアリー
この作品の主人公はハンコックだが、ハンコック以上に重要なキャストがこのメアリーだ。
メアリーがいなければ、「クズ」呼ばわりされていたどうしようもない超人がスーパーヒーローへと変貌していくただの成長物語となってしまうところだった。このメアリーの存在によって別次元のストーリへと変化した。
メアリーの突然の豹変には驚いた。まさかこんな展開になるとは予想だにしなかった。メアリーがハンコックと同じ超人だったなんて。しかもハンコックより強いという。
そしてメアリーにもハンコック同様、人から言われると切れる言葉がある。ハンコックは「クズ」と言われると切れる。一方メアリーは「いかれている」と言われると切れる。しかも、切れ方がハンコックの比じゃない。周囲のビルや道路など見境なく巻き込む。ハンコックなどかわいいものだ。いくつもの竜巻を起こし、周囲を破壊しまくる。強いから収まるまで手が付けられなくなる。
メアリーがハンコックと初めて出会ったとき(本当は初めて出会ったのではないのだが)のまなざしは、蔑みとか、侮蔑と思ったのだが、実は怒りと愛情が入り混じった熱視線だったようだ。
ハンコックとメアリーは何千年も生きている超人で、しかも残りの超人は今では二人きりだという。この超人たちは男と女のカップルで作られたようで、お互い遠く離れていればそれぞれ超人的力を発揮できる。しかし、2人が近づくとその力は弱まり人間のようになってしまうそうだ。そしてカップル同士は深い愛情で結ばれている。ハンコックとメアリー以外の超人たちは超人を捨てて愛情を選んで死んでいった。
ハンコックとメアリーもお互い幾度も近づいて命を落としそうになった、ギリギリのところで生き延びてこれたのだが、80年前のマイアミでハンコックが暴漢に襲われた時記憶をなくしたようだ。
レイがいきなり連れてきたハンコックへ複雑な心境は、一緒に居たいけどいられない、近づきたいけど命が危険にされされるというもどかしいい気持ちだったのだ。そのメアリーの気持ちも知らずに違づいてきたハンコックへの怒りが、冷蔵庫ごと吹っ飛ばす事態になった。この時の茫然としたハンコックの表情。いったい何が起こったのか理解不能の顔をしていた。このシーンが一番いい。
メアリーはレイとハンコックのどちらを愛しているのだろうか。ハンコックに対しては古(いにしえ)からの古い愛情で結ばれている。レイの妻になったのははただの暇つぶしかと思えば、そうでもないようだ。メアリーのレイへ向ける表情は本当に幸せそうだ。
おむつ売り場で途方に暮れていたレイに声を掛けたメアリーは、可哀想な子持ちの男にどういうつもりで声を掛けたのだろう。超人のメアリーからしたら子犬に手を差し伸べる感覚だったのだろうか。それともレイに惹かれるものがあったのだろうか。確かにレイは少しズレているがものすごくいい人だ。たとえ相手がどんな人であっても助けようとする純粋な心を持っている。そこにメアリーは惹かれたのだろうか。
メアリーは年を取らないし超人だし、かたやレイはどんどん老いていく。40年、50年もたてば、メアリーは全く変わらず一方レイはおじいちゃんになっている。メアリーとしてほんの一瞬の時間だが、つかの間の幸せでもいいから欲しいと思ったのだろうか。
メアリーが瓶のふたを開けられずレイに空けてもらうシーンをみて本当に彼女はレイを愛しているのだと感じた。自分の能力をひたすら隠して、レイを立てている。瓶のふたぐらい指先で軽く潰してしまえるだろうに。
メアリーのレイへの愛情は精神的なもので、ハンコックへの愛情は本能的なものなのだろう。メアリーにとってはどちらも偽りのない大切なものなのだ。
レイ
レイはいい人だが少しズレている。
レイは何故踏み切りで停車していたのだろう。夢中になると周りが見えなくなってしまうタイプのようだ。でもそのおかげでハンコックと出会うことが出来たわけだが。
慈善活動家らしいが、莫大な金額を投入して開発した商品を無償で提供しろと持ち掛けるのは「馬鹿か」と一蹴されるのは当然だろう。
いくら企業のPRになるとはいえ、それ相当の効果がないと話に乗って来ないだろう。
レイがハンコックに警官には「よくやった」と言えと教えているが、ヒーローモノの影響だろう。スーパーヒーローが現場に到着するまで、警官たちが命がけで踏ん張っている。そこへ到着したスーパーヒーローは警官たちへ「よくやった」と声を掛けるシーンをたびたび見かけるが、あれをハンコックにやらせたかったようだ。
しかし、いままで犯罪を防ぎながらも莫大な被害を起こしてきたハンコックから「よくやった」と褒められても、警官は「何を言っているんだ」となってしまう。ハンコックが慎重に力を抑制して被害を出さずに犯罪者を捕まえた後も、警官に「よくやった」と言っているから、逆に署長から「お前の方がようやった」を返されてしまった。
どうもハンコックはレイ以上に場の空気が読めなくなっているようだ。これは80年前の記憶喪失が原因しているのだろうか。それとも生まれながらのものなのだろうか。
そこで、いい具合にハンコックというスーパーヒーローが誕生した。それもレイのおかげで。これをうまく利用してお互い相乗効果をもたらすことが出来るのだではないだろうか。レイはハンコックの知名度を生かして、慈善活動を。一方ハンコックは、スーパーヒーローと合わせて慈善活動のPRを。
超人
ハンコックやメアリーがどのように誕生したのかは詳しく語られていない。
かつて何千年も前に、複数のカップルが作られたという。そのカップルの内の一組がハンコックとメアリーだ。彼らは時代によって『神』とか『天使』と呼ばれ、今の時代では『スーパーヒーロー』と呼ばれている。
ハンコックは人類の”保険”であり、自分たちは”作られた”と語っていたメアリーの言葉から、”超人”達は別の星から飛来した地球外生命体ではなく、ある目的のために作られたと考えられる。
この超人たちを作ったのは誰なのだろう。勝手な創造だが、可能性として高いのは地球外生命体だ。科学技術の粋を集めて作り出されたのが、地球人に似せて作り出された『超人』だ。いつか訪れるであろう”人類滅亡”を見越して作られたのだ。
超人の設定も面白い。カップル同士が違づくとそれぞれの超人的なパワーが失われて、普通の人間の体になってしまう。お互い距離が離れるほど、それぞれのパワーが増す。しかし、カップルとして作られたので、どうしても引き寄せあってしまうのだ。そして近づけば近づくほど周囲の温度も上昇する。近くのポップコーンがはじけるほど温度が上昇するのは、メアリーのせいかもしれない。なぜなら彼女は大気を操れるから。
ひとつ気になったのが、元心理学教授で銀行強盗の主犯にハンコックとメアリーが襲われた時。ハンコックが銃で撃たれたり、殴られたときシンクロするようにメアリーの体も反応していた。カップルが近づくと愛情が押さえきれなくだけでなく、お互いの感覚が同調する『一心同体』になるようだ。これはどういうことだろう。瀕死の状態の時にだけ起こるのだろうか。
映画《ハンコック》まとめ
ハンコックは本物のスーパーヒーローになった。
以前は人を助けると非難され、酒に溺れ、蔑まれてもそれでも困っている人がいると助けてしまう。
踏切で立ち往生しているレイも見捨てることもできたが、やはりハンコックは助けた。助けたとしても賞賛されることもないと分かたいるのに、見捨てることはできなかった。「世捨て人」のように人のいない土地で生きることもできたはずだが、人とかかわっていなければいられない性分なのだろう。
どんなに非難されようとレイを助け続けた結果、事態が好転した。いい方向へ歯車がかみ合い動き出したのだ。レイと出会い、メアリーと再会し、そして記憶は戻らないけどスーパーヒーローに返り咲いた。
どんなに非難されようと、結果が自分にとって好ましいものでなかったとしても、自分のやるべきことをやり続ければいつかいい方向へ動きだす。