映画《イントゥ・ザ・スカイ》ネタバレ感想:初めて天気を科学的に証明した冒険家と科学者の実話

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作品情報

原題:The Aeronauts
公開年:2020年
製作国:アメリカ、イギリス
上映時間:101分
監督:トム・ハーパー
評価:80

《イントゥ・ザ・スカイ》主要キャスト

アメリア・レン(フェリシティ・ジョーンズ)
 気球操縦士

ジェームズ・グレーシャー(エディ・レッドメイン)
 気象学者、天文学者

アントニア(フィービー・フォックス)
 アメリアの姉

ジョン・トリュー(ヒメーシュ・パテル)
 ジェームズの友人

ピエール・レン(ヴァンサン・ペレーズ)
 アメリアの夫。事故死している。

エセル・グレーシャー(アン・リード)
 ジェームズの母。

アーサー・グレーシャー(トム・コートネイ)
 ジェームズの父。

《イントゥ・ザ・スカイ》あらすじ

1862年ロンドン。この時代まだ天気は科学的に予測するものではなく、占いに頼る非科学的なものだった。しかしただ一人、ジェームズという科学者だけは違った。
彼は天気も、物理学のように理論的に説明できるものだと確信していた。王立協会では他の科学者たちに、自分の仮説と気球による観測の必要性を訴えるのだが、馬鹿にされるだけで誰一人まともに取り合ってくれるものはいなかった。
八方ふさがりのジェームズは、藁にも縋る気持ちで女性気球操縦士のアメリア・レンに白羽の矢を立てた。なんとか資金集め、アメリアの反意などいくつかの試練を乗り越えてようやく二人を乗せた気球が空へと飛び立つ。
しかし、上空はジェームズの予想だにしない所だった。

《イントゥ・ザ・スカイ》感想

サーカスのような気球飛ばし

派手な衣装と、濃いめのメイクで大勢の観客の前に登場したアメリア。彼女が気球の操縦士だという。どういう経緯で、しかも女性がサーカスでも始めるような状況で気球を飛ばすのだろうと疑問を感じていた。

気球を空へ飛ばすのに、お客さんの機嫌を取る必要があるのだろうか?

現代のロケット発射の瞬間のように、大勢の見物客が見に来るのは分かるが、アメリアのあのパフォーマンスは必要だろうかと見ていたら、徐々にわかってきた。

気球を飛ばすには莫大にな資金が必要にだ。そこで、大金持ちに資金提供をしてもらうのだが、慈善事業ではないのだから大金持ちは科学の貢献の為にとお金を出してはくれない。ちゃんともとを取れるような仕組みにしなくてはならない。それが、このサーカスのような興行になったのだ。

資金提供者は出資金以上のお金を見物客から集める。だから悪天候などで中止にでもなれば払い戻さなければならなくなり大赤字になってしまう。だから何が何でも気球に飛んでもらわなければならい。

アメリアの派手なパフォーマンスも、せっかく高い見物料を払って見に来てくれた人々への最大限のサービスの気持ちからのものだ。

愛犬のポージーを上空から落として、見物客を驚かせるのもその一環だ。少しでも楽しんで帰ってもらえれば、次に気球で飛び立つときに、より大勢の見物客が訪れるだろう。ただ科学者が気球に乗って空へ上がるのは、見慣れてしまうとすぐに飽きられてしまうだろうから。

手のひら返しの王立協会

ジェームズが気球で飛び立つまでの、王立協会の科学者たちの馬鹿にした態度。気球飛行から帰還してみると、スタンディングオベーションで賞賛された。

なんてわかりやすい人たち。科学者はやはり証拠がなければ分かってもらえない人たちだ。

しかし、ジェームズが必死で訴えかける天気の科学的予測を、すべての科学者が否定するものなのだろうか。科学的に証明されていないことは、占いや迷信の範疇と頭から決めつけてしまうのものなのだろう。

しかし、あそこまで馬鹿にしておいて一旦天気が予測できると明らかになると、手のひら返しで最大限の賞賛を送る。科学者以前に人として恥ずかしくならないのだろうか?

アメリア・レン

彼女はこの時代には珍しい自立した素敵な女性だ。

パフォーマンス用の派手な衣装とメイクを落とした素顔が綺麗で凛々しい。

過去のトラウマからジェームズの気球操縦士の依頼を断ってきた。それは仕方がないだろう。だって、夫のピエールが自分を犠牲にしてアメリアの命を救ってくれたのだから。この事実が分かった時は衝撃だった。

約2年前。ピエールとアメリアの二人は気球で空を飛んでいたが。そのとき操縦士のアメリアの判断ミスで気球が裂け始める。少しでも軽くしようとあらゆるものを地上へ投げ捨てるが、それでもまだ急降下は止まらない。夫ピエールはアメリアだけでも助かってほしいと、自ら気球のバスケットから飛び降りる。

こんな過去だったとは。しかも世間一般にはピエールの無謀な行動によって自ら命を落としたということになっているらしい。なぜだろう。アメリアの性格からすれば、本当のことを世間に公表すると思うのだか。

ジェームズと気球に乗っている時は、ベテラン操縦士のお姉さんとい感じで、逞しく頼りになる姉御肌だ。

途中過去を思い出して一時精神的に不安定にはなるが、すぐに元に戻りそのことは自分でもよくわかっているようだった。

二人の乗った気球は、降下するための弁が凍り付いて開かずどこまでも上昇する危険な状態に陥る。彼女の決断は早かった。すぐさま気球のロープをよじ登りはいじめる。てっきりすぐそこに見えている気球の下側の部分までだと思っていいたら、なんと気球の表面をよじ登り始めるではないか。まさか、「そうやって、てっぺんまで行くつもりですか?」

なんと無謀な。なんて無茶なことを。

でも考えてみれば当然だ。気球内のガスは空気より軽く上の方にたまっているはずだから、気球の下の方から抜けるわけはない。気球の上部を開かなければ中のガスは外へは出ないのだ。

だから、アメリアの引いたロープは、気球の中心を通っててっぺんの開閉弁に繋がっていたのだ。

両指の感覚がなくなって、腕にロープを絡めて自分の体を持ち上げていく。寒さと疲労で意識が遠のく中、それでも少しずつ頂上目指して前進する。なんだか、雪山の登山みたいだ。アメリアは誰も踏み入ったことのない、極地を目指す冒険家と同じだ。世界最高峰の山を目指す登山家、まだ誰も足の踏み入れたことのない極地を目指す冒険家。

アメリアは誰も到達したことのない最高高度へ達した冒険家だ。

ジェームズ・グレーシャー

グレーシャーは純粋な科学者だ。世間の名声や栄誉の為ではない。「人間の力ではコントロールできない天気を科学的に解明して、農業や船の航行に役立てたい」「混沌とした世の中で科学の力によって秩序をもたらしたい」と真剣に考えている。

周囲の科学者にどんなに馬鹿にされようと、自身の考えを変えることは決してない。気象は必ず科学的に解明できると信じている。

あまりの科学への熱望の為に自らの命を犠牲にする科学者もいた。彼も、未知への探求心のあまり、自分の命をおろそかにしそうになった。それをたしなめたのがアメリアだ。相棒がアメリアでなければジェームズの命はなかったかもしれない。

それにしても、上へ行くほど気温が高くなるはずだからと、レインコートなどより温度計を4つも持ってくるとはジェームズらいし。

アメリアは必ずレインコートが必要だからと、持ってくるようにとジェームズへ言っていたのだろうが、ジェームズは聞く耳もたず観測機を優先してしまった。そのため、寸でのところで命を落とすところだった。

あまりにも無謀というが、頑固というか、これくらいの信念がないと誰もなしえていなことをなすことは出来ないのだろう。

《イントゥ・ザ・スカイ》まとめ

何といっても景色が美しい。気球から見る地上の景色。それも快晴ではなく、雲間からこぼれる太陽の光が地上を部分的に薄いオレンジ色に染める。

そして、雲の上に出た瞬間。上空は青い空。下には分厚い雲。雷雨の中を抜けてきた直後だけに、雲の上の世界がより別世界に感じられる。

最後のアメリアの言葉が胸に刺さる。
「私たちは新たな発見をするために空を飛びました」
「世界を変えるため」
世界は見てるだけじゃ変わらない
自分がどう生きるかで変わるのです
「上を見て」
「空が開けています」

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