作品情報
原題:長城/The Great Wall
公開年:2016年
製作国:中国/アメリカ
上映時間:103分
ジャンル:ファンタジー・アクション
監督:チャン・イーモウ
評価:80
主要キャスト
ウィリアム・ガリン(マット・デイモン)
世界中を旅してまわる欧州の傭兵。今回は宗の国へ黒色火薬を求めてやって来た。
ペロ・トバール(ペドロ・パスカル)
ウィリアムと共に宗へやって来た傭兵。さっさと火薬を手に入れて逃げ出したいと思っている。
バラード(ウィレム・デフォー)
25年前に黒色火薬を求めて欧州からやって来た傭兵。
リン・メイ隊長(ジン・ディエン)
鶴軍将領。英語が話せる。
ポン・ヨン(ルハン)
熊軍兵士
シャオ将軍(チャン・ハンユー)
禁軍統領。兵士に慕われている。リンの育ての親であり師。
ワン(アンディ・ラフ)
禁軍の軍師。冷静沈着で頭が切れる。
ウー隊長(エディ・ポン)
虎軍将領
チェン隊長(ケニー・リン)
鷹軍将領。赤の武装。射手の部隊を指揮。
ドン隊長(ホアン・シュアン)
鹿軍将領
シェン特使(チェン・カイ)
枢密院特使
見どころ
・奇想天外の兵器や戦術
・青の武装をしたリン隊長
・CGをふんだんに駆使した戦闘シーンや怪物(饕餮)の群れ
グレートウォールあらすじ
宗王朝の時代。欧州の傭兵ウィリアムとペドロたちは宗へ黒色火薬を求めてやって来た。途中馬賊に襲われ辛くも逃れるが、夜間未知の怪物に襲われる。何とか怪物の片腕を切り落として難を逃れるが、宗の禁軍に捕らえられてしまう。怪物の片腕を持ち帰ったウィリアム達を禁軍は尋問するがリン隊長は殺してしまうことを提案する。ウィリアムが一人で怪物を倒したことが信じられないという隊長たちだが、ワン軍師が監禁しておく方が良いと進言する。禁軍の将軍以下隊長たちはウィリアムが倒した怪物が斥候であり怪物たちの襲撃が予想より早まっていると緊張感が走る。
グレートウォール感想
何もかもがぶっ飛んでいる
こういう作品は好きだ。何もかもがぶっ飛んでいて突っ込みどころ満載なのがいい。ここまで真剣にかつ大げさにやってくれると気持ちがいい。
禁軍の兵器がとんでもなく突拍子もない。そんなのありうるのかというやり方で戦うのだが、その規模のでかさと言い、大量に使う兵士の無駄使いと言い、何もかもが大仰なのだ。
大げさな割には、成果が乏しい。大量の敵に対して、ほんの僅かばかりの敵しか倒せないのだから。
大量の兵士が隊列を組んで、狭い長城の上を行ったり来たり、いったい何がしたいのか、どこへ行くのか。
ここまでぶっ飛んだ設定だと逆に見ていて面白くなってくる。こういう作品だなと割り切ってみればいいんだ。
たくさんの大太鼓をたたいて、しかもヌンチャクでたたいて士気を鼓舞しているようだがこのへんも芝居がかっていて面白い。
日本の戦隊ものに似ている。色分けされた組織と言い、大げさな動きと言い。各色の隊長はそのまま戦隊に出演できそうな見栄えだ。
強大火の玉投石器はすごい。装填段階から見せてくれる。綺麗な球状に形成された直径50cmほどの石に、黒い油状のものを掛けて、火をつけて投石する。轟音をとどろかせながら複数の巨大な火の玉が饕餮の群れの中に着弾する。爆弾が爆発したようにあたり一帯が火の海と化す。
ウィリアム
むさっ苦しいウィリアム。はじめはガリア人かというぐらい蛮族風の出で立ちだったが、さっぱりしたら西洋の騎士っぽくなった。
今まで金だけを信じて生きて彼だったが、リン隊長と出会ってから少しずつ変わり始める。人を信じることを教えられたようだ。その年で、いまさら人を信じることを教えらえて変われる者だろうか。よほど大変な出来事でも起きない限り無理だと思うが。リン隊長に恋をしたということでもないようだったが。
火薬を盗んで逃走するという仲間トバールとは決別してここに残るという。何が彼をそこ迄変えたのかという動機が薄い。もっと確固たる理由付けが欲しかった。
トバール
さっさと火薬を手に入れて、こんなやばい怪物の出るとこらから逃げ出したいのだが、ウィリアムが残ると言い出し、困り果てる。ウィリアムの弓の腕は西洋までの帰りの道中になくてはならないし、しかしこんなところにも長居したくないし。
結局、饕餮と戦っているピンチのウィリアムを助けに行くのだから、なかなかいいやつだ。
しかし、バラードと二人だけで逃げ出すことにするのだが、バラードに「ちょっと高いところから偵察してきてくれ」と言われ、素直に馬を降りて丘を登っている隙にバラードに馬事全部持ち逃げされてしまう。
なんてお人好しのトバール。根っからの悪人ではなく、いいやつなのだ。だから、最後に捕まったバラードをウィリアムは火薬を諦めて彼を選んだのだ。死線を乗り越えてきた二人はこれで親友になれたのだ。たぶん。
リン
とにかく美人。そして凛とした気品がある。この作品はウィリアム(マット・デイモン)が主役だろうが、自分の中ではリン隊長(ジン・ディエン)が主役だ。
何があっても感情を表に出さず、あくまでも国のために忠誠を誓う。そして青の甲冑がよく似合う。長城からバンジージャンプのように落下して饕餮を倒しまくる姿が演武を見ているようだ。
しかし、中には饕餮に喰われるものも。リン隊長の部隊は全員女性で構成されていて鶴軍と呼ばれている。体重の軽い方が鶴軍の戦術には有利だからのようだ。
しかし、なかには饕餮に喰われ空の補助具だけが戻ってくるものもある。悲惨だ。
リン隊長は、はじめウィリアムが捕らえられたとき、さっさと殺すべきと進言していた。だが、次第に彼の勇猛果敢な姿や彼の心境の変化に心を開いていく。それども恋には発展しない。
いいところ
長城が作られた理由には「史実と伝説」の両方があるという下りが面白い。匈奴からの侵攻を防ぐための史実とは別に古代の怪物『饕餮』を防ぐためにも作られたという。
その饕餮が馬賊から逃げ延びた西洋の傭兵ウィリアムたちに襲い掛かるシーンでは、敵の姿が見見えない分、恐怖と興奮で盛り上げてくれる。
禁軍は色によって弓の軍や歩兵など分けているが面白いが、すべての色が何軍化の説明が欲しかった。そこがちょっと残念。
グレートウォール演出
将軍が亡くなった時の葬送の儀式が素晴らしい。空に飛ばした無数の提灯が夜空に浮かび天の川のようだ。
複数の人間を乗せた気球、熱気球だろうが熱だけであれだけの重量物を浮かせられるのだろうか。しかも偶然首都への風向きが吹いていたからあれだけ順調に飛べたのだろうか、いくら何でもうまくいきすぎだ。そうだった、あまり細かいことは考えないことにするんだった。
首都が饕餮に迫っている時に、他の軍はどこにいたのだろう。全軍が長城にいたわけでなないだろうに。せめて首都を防御する軍はいたはずだが、宮廷の人々しか見当たらない。また突っ込んでしまった。
饕餮(とうてつ)
初めて聞いた。60年に一度現れ人類を食い荒らす妖怪のようなものだ。
饕餮の姿は、両目が顔より後ろにあり、口が大きく裂けて、たんにでも喰らいいつく異形怪物だ。体は薄緑色、体液もそれより濃い緑色。弱点は眼で、そのほかの部分を切りつけても刺しても全くひるまない。性格は極めて狂暴で生き物を見るとなんにでも喰らいつく。
1匹の女王が指令を出し率いているのだが、その女王を護衛する護衛部隊がいる。女王に危害が及びそうになると鉄壁の防御を形成する。騎士団が盾を積み上げて作り上げる防御陣形みたいだ。
この饕餮をウィリアムとトバールが連携してやっつけるシーンが見ごたえがある。ウィリアムは弓、トバールは斧を得意とし両者の連携プレーで饕餮を倒していく。スピード感があって面白い。
次から次へと出てくる面白兵器
太鼓をヌンチャクで叩く(これは兵器じゃなかった)
器用にヌンチャクを振り回し太鼓を連打する。士気を高揚するためには必要なのだろう。ヌンチャクの方が高速で打てるのだろうか。
バンジージャンプのように飛び降りて饕餮を切り裂く(あんなにうまく城壁に戻れるものなの
か?)
鶴軍の戦術だが、一度飛び降りたら元の高さには戻れないだろう。
弓に火薬をつけて爆発させる
これは確実に饕餮をやっつけられる。
城壁の隙間から巨大な包丁が
何故もっと早くから出さなかったのだろう。城壁を登ってくる饕餮をこれでことごとく切り刻んでしまえばいいのに。ただ、動きが鈍いので、すり抜けてしまう饕餮もたくさんいるようだ。
鳴き矢(矢が風を切ると音が出る)
敵に向かって飛ぶ時も音が出るから、敵に察知されやすいのでは。
アブなかっし熱気球(うまく長城から都へ風が吹いていたからよかったものの)
出ました、問題の熱気球。失敗して墜落している気球も複数あったから、うまくいく方が珍しいことにして一か八かの賭けに出たのだろう。
グレートウォールまとめ
突っ込みどころ満載の作品だが、そういう部分は軽く流して禁軍VS饕餮の戦闘シーンを十分に楽しんだ方が良い。映像が素晴らしいので楽しめた。続編があったら見てしまうな。