映画《女王トミュリス 史上最強の戦士》あらすじネタバレ感想:キュロス大王を倒した草原の女戦士

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目次

作品情報

原題:Томирис
公開年:2019年
製作国:カザフスタン
上映時間:126分
ジャンル:歴史戦記ドラマ
監督:アカン・サタイェフ
評価:80

人類史上初の世界帝国を治めたキュロス2世。そのキュロス2世を彼を死に追いやった、草原の女王トミュリスとはいったいどんな女性だったのか。

なぜ少女が一族の女王となりキュロス王を倒すことが出来たのか。彼女の物語はあの有名な歴史家ヘロドトス『歴史』の中に記されている。

主要キャスト

トミュリス(アルミラ・ターシン)
 スパルガピセスの娘。父から将来の戦士として鍛えられる。

スパルガピセス(ムラト・ビセンビン)
 トミュリスの父。マッサゲタイ族の長。

ボパイ
 トミュリスの母

カラスパ
 スパルガピセスが殺された時、幼いトミュリスを連れてに逃げた族長の部下。

カバス(エルケブラン・ダイロフ)
 マッサゲタイ族。スパルガピセスを裏切る。

フルトン
 マッサゲタイ族。スパルガピセスを裏切る。

サルダナ(アイザン・ライグ)
 サルマタイ族の長の娘。瀕死のトミュリスを助け、後に親友となる。

アルグン(アディル・アフメトフ)
 ダハエ族の長の息子。トミュリスに気がある。後の夫となる。

スパルガピセス
 アルグンとトミュリスの息子。トミュリスの父の名をもらう。

ティラス
 トミュリスが征服した集落で下僕として使われていた孤児。トミュリスが引き取り、後に側近になる。

キュロス王(ハッサン・マスード)
 アケメネス朝ペルシアの王。

グバール
 キュロス王に仕える商人。

『女王トミュリス 史上最強の戦士』あらすじ

族長の娘トミュリスが幼い頃、父スパルガピセスは一族の裏切り者、カバスとフルトンに殺される。いわゆる謀反だ。

トミュリスは、信頼のおけるカラスパに連れられてかろうじて惨殺の場から逃げ延びる。

追ってもこないような人の住まぬ地に、わずかばかりの民と共に人目につかぬようひっそりと生活する。

成長したトミュリスは、一人仲間から離れ父の復讐へ向かった。その隙に残してきた民達が何者かに惨殺される。

トミュリスは彼らの後をつけ、一人残らず片づけるが自身も重傷を負ってしまう。瀕死の所をサルダナに助けられ、のちに彼女の部族の助けを借りて父の復讐を果たす。

面白かった点

実写の迫力

CGを使わない実写により戦闘シーンが圧巻の素晴らしさだ。特にラストの草の民とペルシャ軍の激突は迫力満点で、臨場感とも実写ならではだ。

騎馬軍団同士の激突。激しくぶつかり合う剣と剣。剣や鎧の金属音。馬のいななきや人の雄たけび。無数の音に包囲されて戦場にいるような感覚になる。

次々と敵を薙ぎ払う猛者がいる一方、一撃で切り伏せられる兵もいる。やがて闘い疲れた一瞬のスキを突かれて、敵の剣を受けてしまう強者。たとえどんなに強くても時間と共にやってくる疲労には歴戦の強者でも勝てない。

二つの復讐劇

この作品は、二つの復讐劇を中心に語られている。

一つ目はトミュリスが幼き頃、部族の裏切り者に父(部族の長)を殺されたこと。

二つ目はキュロス王に夫と息子を殺されたこと。

 

そしてトミュリスは二つとも自らの手で確実に復讐を果たして見せる。父から幼い頃より後継ぎとして男のように心も体も鍛えられてきた賜物だ。

マッサゲタイ族の者たちは、帰郷したトミュリスの事をスパルガピセスの娘と知って、すぐに彼女を後継者と認め、裏切り者二人の親族もすぐに拘束してしまった。

父スパルガピセスを殺害した裏切り者のカバスとフルトンの二人に対して、現在も部族の中で二人に対する不満がくすぶっていたのだろう。

先代の長が信頼されていた証拠だ。現在の長のやり方には不満があったのだろう。

もう一つの復讐。キュロス王は招待したトミュリスの夫と息子をはじめから殺すつもりではなかった。意に沿わない草原の民をこのまま返してしまうのは王の威厳が損なわれると変に忖度した腰ぎんちゃくの商人グバールの進言によるものだ。それがなかったら、夫と息子は死なずに済んだのではないだろうか。だがグバールもトミュリスの手によって制裁されるのだが。

キャスト

トミュリス

一つ目の復讐劇

トミュリスの母は産後すぐに亡くなってしまい、父は幼少期に裏切りものに殺されてしまう。なんて過酷な人生の始まりだろう。

部族の長の娘として育ってきたトミュリスは、突然部下の裏切りによって目の前で父を殺される。一番逢いたい母にもその願いは叶わない。

トミュリスは幼少期に過酷な体験をしたからか、感情を表に出すことがなくなった。

しかし、意思の強さは父親譲りで自分で決めたことは頑固なまでに貫き通す。それが仇となった事件が起こる。

わずかばかりの民と逃げ延び人目を忍んで生活していたが、長い身を潜めた暮らしについに我慢できず、復讐のために民たちのもとを飛び出してしまう。庇護者のカラスパのいうことを聞かず、一人復讐のために民のもとを離れた、その隙をつかれて、民たちは全員惨殺されてしまう。

しかし、トミュリスはきっちり落とし前をつける。長の娘としての義務はしっかり果たしたのだ。たとえ女であってもスパルガピセスの娘、長の娘としてみっちりと剣術を仕込まれただけのことはある。

そういえば、トミュリス以外の女性が戦っているのは、サルダナのサルマタイ族の女性達だけだ。他の部族の女性は誰一人戦っていなかった。草原の民は男も女も馬に乗って戦う印象があるのだが女性は家庭を守るのが役割のようだ。サルマタイ族以外は。

瀕死の重傷を負ったトミュリスはサルダナに助けられ、その後ダハエの長の息子アルグンと結婚する。

二つ目の復讐劇

20年ぐらい平穏な生活が続いたのだろうか。突然西の大国ペルシアが草原地帯へ領土を広げようと欲を出し始める。キュロス王は草原の騎馬民族をエジプトを征服の駒として使いたいと考えたようだ。

そのペルシアのキュロス王の策略にまんまと夫のアルグンは乗ってしまい、息子と共に首都バグダッドへ。なぜ息子も連れていったのか? 大事な跡取りを見知らぬ土地へ連れていくとはアルグンには思慮がなさすぎる。いつなんどき、戦になるか分からないこの時代に、跡取りも一緒に行くのはまずいだろう。案の定二人ともペルシアの酒と女の接待を受けているところを急襲されて惨殺されてしまう。

ペルシア帝国に対して不信感一杯のトミュリスは、ティラスに夫と息子の跡をつけ探らせていた。ティラスは首都にはいったまま出てこない二人の事をトミュリスに報告し、その後ベルシア商人グバールが夫と息子二人の変わり果てた姿を運んでトリュミスのもとにやって来る。

トミュリスは即座にグバールを殺しキュロスへ送り返す。トリュミスの宣戦布告だ。これに激怒したキュロス王は大軍を引き連れて草原へと出陣する。迎え撃つ草原の民はの兵力はペルシア軍の半分。それでもトミュリスは草原の部族たちの尊厳の為に戦う決心をする。

性格 

トミュリスはいつも、父から教わった長となるべき心得を繰り返し思い出し自分に言い聞かせていた。そのため、いざ長となった時にはすでに十分な貫禄があり、誰もが認める長の器を備えていた。
夫のアルグンよりも威厳があり堂々としている。しかもかっこいい。

思慮深い

トミュリスはペルシア帝国がなぜ草原の部族と友好を結ぶ必要があるのか疑問に思っていた。ペルシアは何故これまでのように草原の部族たちを武力で制圧しようとしないのか?わざわざ貢物を持ってはるばる来ることが腑に落ちない。このあたり思慮深い性格が現れている。

反面夫は考えが浅い。キュロス王を信じて、のこのこと隊商の跡をついていき挙句に息子ともども殺されてしまうのだから。

洞察力がある

ペルシア帝国もマッサゲタイ族の戦術を研究している。そのため不死隊という王直属部隊を準備してトミュリスの部隊を迎え撃つ。しかし、トミュリスはその裏を読み、各部族から精鋭を集めて100部隊を組織する。狙うはキュロス大王の首のみ。怒涛の如く突撃する100人の精鋭部隊は、ペルシア帝国軍の中心を鋭い矢じりの如く貫いていく。

サルダナ

偶然、瀕死の重傷を負ったトミュリスを見つけてくれたのがサルダナでよかった。しかもサルダナの部族(サルマタイ族)は女性が男性以上に戦士あり、髑髏を3つ集めると(敵を3人倒すと)優れた男性と結婚できるそうだ。この部族では男性の肩身が狭い。長であっても男は影が薄い。発言力も弱い。

サルダナに出会えたから、トミュリスは父の仇を打つことが出来た。この出会いがトミュリスの人生を大きく変えた。そして、その後サルダナは共に命を賭けて闘ってくれる親友となった。

しかし、トミュリスはペルシアとの激戦でかけがえのない親友を失ってしまう。

ティラス

あの孤児だった子供が、成長した暁には勇者になるとは予想もしなかった。

彼は自分の置かれている境遇から救ってくれたトミュリスに感謝しているのだろう。トミュリスの為になら命を賭ける青年に成長していた。しかもものすごく強い。

せめてティラスを夫と息子がそばに伴ってペルシアへ赴いていれば、また違った結果になっていたかもしれない。いやいかにティラスであってもあの招待の晩餐の場では救えなかっただろうか。

裏切りの原因

カバスとフルトンが裏切った原因は、他部族を略奪するこれまでの生き方に嫌気がさしたのだ。この時代の草原の民の生活は、問答無用とばかりに他の部族を侵略して奪い取ることによって成り立っている。それが当たり前のことで、強いものが生き残る弱肉強食の世界だ。

そういうことが当然の生活のなかで、カバスとフルトンは交易によってほしいものが手に入ることを知る。交易であれば相手の命を奪うこともなく、こちらが命を落とすこともない。そして、友好的な関係が続く限り継続的に欲しいものを手に入れることが出来る。

今の社会では当たり前の考え方だが、当時の草原の民にしてみれば、なんとも生ぬるい軟弱なやり方に写ったのだろう。長に脅され、その後「怖いかと」他の仲間たちの前で侮辱されたと感じた二人は、長を殺害するしか解決の道はないと決断したのだろう。この解決方もかなり野蛮なのだが。

史実には

トミュリスはキュロス王の首をベルシア兵の血で満たされた革袋の中に投げ入れると『私は生き永らえ戦いにはそなたに勝ったが、所詮は我が子謀略にかけて捕らえたそなたの勝であった。さあ約束通りそなたを血に飽かせてやろう』引用:ヘロドトス『歴史』

トミュリスは復讐を遂げることが出来た。しかし相手を殺したところで息子が戻ってくるわけではない。ようやく果たせた望みだが彼女の心に残るのは虚しさしかないようにこの言葉からは感じる。

まとめ

世界最強のペルシア帝国を相手取り、しかも敵の王を打ち取った女王トミュリスにもかかわらず、あまりにも残された記録が少ない。
記録が少ない分、いろんな想像ができる。
少女からどうやって最強戦士となったのか、夫に先立たれその後どうやって女王として部族をまとめ上げたのか。騎馬軍団を率いて大帝国と対峙するまでにはどのような困難があったのか。
篠原悠希著に『マッサゲダイの戦女王』というトミュリスを主人公にした本が出版されている。読んでみよう。

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