映画《私の頭の中の消しゴム》ネタバレ感想:キャッチコピーは『死より切ない別れがある』

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作品情報

英題:A Moment to Remember
公開年:2005年
製作国:韓国
上映時間:117分
ジャンル:恋愛・ロマンス
監督:イ・ジェハン
評価:83

映画《私の頭の中の消しゴム》主要キャスト

チェ・チョルス(チョン・ウソン)
 建築現場の監督

キム・スジン(ソン・イェジン)
 建築会社の社長令嬢

ソ・ヨンミン(ペク・チョンハク)
 スジンの元不倫相手

キム社長(パク・サンギュ)
 スジンの父

オ・マダム(キム・ブソン)
 チョルスの母

病気のおかげで運命の出会いをしたが、病気のせいで別れなければならなくなった二人

映画《私の頭の中の消しゴム》あらすじ

社長令嬢のスジンは昔から忘れっぽいところがあった。しかし、そのことをまだそれほど気にしていない。

コンビニで買ったコーラを忘れてきて急いで取りに戻ると、コーラを手にした男と鉢合わせする。スジンは自分のコーラを持ち去ろうとする男の手からそれを奪い取り、一気に飲み干してしまう。しかし、それが自分の勘違いだったことを後で知ったスジンは、その男の事が心の片隅に残る存在になる

後日、父の車に同乗中、作業現場であの時の男を偶然見かける。恋が始まった瞬間だ。

二人は徐々に親しくなり、愛し合うようになり、そしてついに結婚。

幸せな新婚生活を送っていたが、どうも妻スジンの様子がおかしいことに気付き始める。そして、スジンが受診した医師のもとへ訪ねていくとそこで衝撃の事実を知らされる。

映画《私の頭の中の消しゴム》感想

硬派の「チョスル」

 同性から見てもかなりカッコいい。

作業着のあちこちに工具をぶら下げての仕事ぶりは、ほれぼれする。

不愛想で、肝が据わているというか場数を踏んでいるというか冷静沈着で何事にも動じないタイプだ。

相手が上司であろうが、社長であろうが現場監督として納得できないことははっきりとだめだと言う。気持ちがいい性格だ。

自分の仕事に誇りと信念を持っているので、少しの妥協も許さない。しかも部下に対しても完璧な仕事を求める。不平を漏らすが頼りがいのあるボス、チョルスの部下もそんなボスを信頼している。

会社としては言うことを聞かないチョルスは使いずらく、うるさい現場監督だろう。しかし仕事の出来が素晴らしいので、辞めさせるわけにもいかずしかも今の立場があるのだろう。

スジンと初めて出会ったのはコンピの出入り口。チョスルが手にしていたコーラをスジンが勘違いして飲み干してしまう。そのあとのシーンでは、「スジンが買ったコーラをチョルスが無言で奪い取り一気に飲み干す」という仕返しをする。この二つシーンのチョスルの表情と仕草がまた、たまらなくカッコいい。

肝が据わった、何事にも動じないチョスルも愛するスジンの病状を知って激しく動揺する。思いもよらない病状に動揺とショックが隠せない。痛いほどその心痛が伝わってくる。

チョルスは白髪で癖のある担当医を藪医者呼ばわりするが、その医者の奥さんも同じ病気になったそうだ。うまい設定だ。担当医は藪医者どころか病状にも、患者の家族の事もよく知っていることになる。これほど患者の家族のことを理解できる立場の人はいない。

スジンの病気を知った時から、極力スジンの前では明るくいようとする気持ちが痛いほど伝わってくる。一番苦しいのはスジンだ。徐々に思い出が減っていくという恐怖と戦うそのスジン。そのスジンを悲しませないよう涙を流しながら精一杯の笑顔を見せようとするチョスルが痛々しい。

時々幼く見える「スジン」

チョスルが勝手に持ち去ろうとしたコーラを奪い取り目の前で飲み干したスジンだが、それが自分の勘違いだったことを知った後のスジンがかわいい。仕草といい、表情といい親しみを感じる。

チョスルの車の助手席に乗ったスジンがいい。スコップに捕まりながら、フロントガラスがないので溶接用のフェイスガードを装着した格好が愛らしい。一瞬幼く見える。

父の教えで、相手を許すには「憎しみに心の部屋を一つ貸すだけ」という言葉がいい。その言葉をスジンは忠実に守っている。たとえ過去にどのような仕打ちをされた相手であっても、その人を「許す」という気持ちを持たなければならない。スジンの実体験からチョルスにそのことを強く求める。

スジンは会社の上司と不倫をしたというが純粋で優しい女性だ。チョスルが長年憎んできた母親を「許してあげて」と説得するシーンが心に突き刺さる。泣きながら必死にチョスルに訴えかける。自分の不倫を父が許してくれたように、チョスルにも母親を許してあげられるような広い心を持ってほしいと願ったのだろう。自分が愛する人なのだから。

一つ疑問がある。チョルスの母親は刑務所に入っていたようだがどういう事情で犯罪者になったのだろうか。差し押さえられていた店が母親の店だったようだが、そこのところが分かりにくかった。

その間の悪さにムカつく「ヨンミン」

むかつく元カレ。スジンのもとに前妻と別れて現れたヨンミンだが、スジンとよりを戻そうと何かと理由をつけて近づいてくる。

スジンは病気のせいで、ヨンミンと付き合っていたころの自分に戻ってしまい、しかもその時ヨンミンが目の前に現れるからややこしくなる。スジンが自分にまだ気があると勘違いするヨンミン。そうではなくてスジンは現在の記憶が無くなり、昔のスジンになってしまっているからなのだか、ヨンミンはそのことを知る由もない。なので100%ヨンミンが悪いというわけではないがその間の悪さにムカつく。

自宅に押し掛けてきたヨンミンをチョルスがぼこぼこにするが、ちょっと殴り過ぎだろう。チョルスの気持ちも分からなくはないが、あそこまでやらなくてもと思うのだが。

映画《私の頭の中の消しゴム》演出

チョルスとスジンのデートから新婚生活にかけての二人の甘い流れは、男から見るとお腹いっぱいという感じだ。

ラストのコンビニでスジンに関係ある人が出迎えてくれたシーンは「やられた」という思いだ。これは反則だ。耐えられるわけがない。今まで少しずつたまっていた涙が溢れ出てしまった。

スジンの手紙にもやられた。愛するチョスルの事を覚えている間に、急いで彼への想いを綴った手紙だ。こんな純粋な愛情が込められた手紙があるだろうか。

今までスジンはチョルスに幾度となく「愛してる」と言ってきた。半面チョルスはスジンに一度も「愛してる」と言ったことがない。その言葉をスジンが自分の事を覚えている間に伝えたくて最後のシーンへと突き進む。いい流れだ。

次第に記憶の中から、愛するチョスルが消えていく。スジンはそんな自分のそばにいるチョスルの悲しみを思うともう別れた方が良いと思ったのだろう。

スジンの中から自分の存在が消えていくことの辛い悲しみに耐えて共にスジンと生きていくことは不可能だ。

スジンは、新しい記憶から徐々に失っていき次第にその恐怖も感じなくなるのだろうか。

映画《私の頭の中の消しゴム》まとめ

若年性アルツハイマー型認知症。少しずつ記憶が消えていき、本人もそのことも自覚しているので不安と恐怖に押しつぶされそうになる。

周囲の人も自分の事を忘れてしまったことへの喪失感と悲しみに打ちのめされる。

お互い一緒に過ごすことは辛い未来しか待っていない。症状が止まるとか回復の望みがあれば共に希望も持てるが、悪化する一方だと一緒にいることが必ずしも幸福とは言えない。別れと言いう悲しい現実が待っている。

スジンは今までの一切の記憶、思い出が無くなってしまうが、チョルスの心の中から生涯スジンとの思い出は消えることはない、最愛の人という事実も。

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