映画《フューリー》ネタバレ感想:アメリカ軍シャーマンVSドイツ軍ティーガー

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作品情報

原題:Fury
公開年:2014年
製作国:アメリカ
上映時間:134分
ジャンル:戦争
監督:デヴィット・エアー
評価:82

主要キャスト

ドン・コリアー“ウォーダディー” (ブラッド・ピット)
 第3小隊1等軍曹

ボイド・スワン“バイブル” (シャイア・ラブーフ)
 砲手。キリスト教徒。

ノーマン・エリソン“マシン” (ローガン・ラーマン)
 新人。副操縦手。

トリニ・ガルシア‟ゴルド” (マイケル・ペーニャ)
 操縦手

グレディ・トラビス“クーンアス” (ジョン・バーンサル)
 装填手兼補修担当。

エマ (アリシア・フォン・リットベルク)
 ドイツ人の民間人。

アメリカ軍の戦車‟フリューリー“の激闘と新人隊員フユーリーの成長物語。

ノーマンの成長物語

入隊して間もないノーマンの成長物語だ。

ベテラン副操縦手の代わりとして彼が配属されたのは、今まで数々の戦功を立ててきた戦車“フューリー”。

ノーマンは今まで一度も人を殺したことがない。そんな彼が命じられた最初の仕事はフューリー内に残された、戦死した前任者の残した血のりと肉片の後始末だった。

いきない最前線の洗礼を受けたノーマンは完全に自信を無くしてしまう。それを見ていたドンは、彼が過酷なこの戦場で生き延びていき、少しでも自分たちの役に立ってもらいがために、捕らえたドイツ兵の銃殺を命じる。

頑なに拒否するノーマンだったが、ドンに羽交い絞めにされ無理やり銃を握らされ引き金を引かされる。茫然自失のノーマンにはこの先さらに過酷な運命が待っている。

今までタイピストとして働いてきたノーマンにとっての戦場はあまりの環境の変化に精神が持つのだろうかと心配になってくる。人を殺せず精神的に追い詰められ自死を選ぶ若者もいるのだろう。そんな隊員は不必要と切り捨てるのは簡単だが、送り出した家族の気持ちを思うといたたまれない。

まだ社会に出たばかりの若者を非情な状況に追いやるのが戦争というものだが、殺さなければ殺される最前線では生き残るために、再び家族と再会するために、心の中の両親を封印して引き金を引かなければならない。それができないようなら生きて帰ることは出来ない。

そんなノーマンはエマとの出会いそしてつかの間の恋によって少し心が癒される。

しかし、ドイツ軍の空爆がエマのアパートを直撃。エマは変わり果てた姿になってしまう。戦場にいる現実を突きつけられたノーマンは戦争のむごさを思い知れされる。

最後の戦闘直前、ノーマンはようやく仲間として認められる。ドンが隠し持っていた酒を回し飲みし(別れの盃)、これまでのアフリカ戦線からの戦いを振り返っている中で、ノーマンに「マシン」というあだ名が与えられた。これでようやく最後になって、”フユーリー“の一員になることが出来た。

父親的存在のドン

 新人ノートンが赴任してきて最初に掛けたドンの言葉「誰とも親しくなるな」

はたしてノートンは理解できただろうか。常に死と隣り合わせの最前線で親しくなった戦友の死ほどつらく悲しいことはない。

たった今、部下に命じて副操縦士の死体を戦車から降ろしたところだ。部下の前では平然と命令していたドンだが、誰にも見られない車両の陰で一人悲しみをこらえていたシーンがグッとくる。

もう一つ同じようなシーンがあった。ノートンにドイツ兵を殺させた時だ。まだ一度も人を殺したことのないノートンに無理やり拳銃を握らせドンが力づくで引き金を引いた。

この時も人目につかないところで、嫌悪感に苛まれじっと耐えていた。

ドンは今まで平然と目の前のドイツ兵を殺してきた。部下の前では絶対的な上官として強い印象を与えてきた。

しかし、心の奥底ではドイツ兵も同じ人間だという気持ちを押し殺して、殺さなければ大切な仲間が殺されてしまう。その一心で今まで引き金を引いてきたのだろう。いつも心の中の葛藤と戦っていたのだ。

部下を一人たりとも殺させないことを胸に誓ってここまで来た。しかし、副操縦手を失ってしまった。

そこへ、入隊して8週間の新人が代わりに送られてきた。この新人をベテラン副操縦手の代わりとして使い物になるまで叩き込まなければならない。しかも、戦場の真ただ中で時間もない。そのため、ああいった手荒な指導法にならざる負えなかった。

背中の無数の傷跡が、今までの戦いの激しさを物語っている。ドンの背中を見るだけで、どんな死線をくぐりぬけてきた隊員だって彼に逆らえはしないだろう。

大尉もドンに一目置いていた。新たな作戦命令を出す際、「やり方はドンに任せる」と言っていた。「噂は聞いている」と。今まで数々の困難な命令に従って結果を残してきたんだろう。

多くの激戦を生き延びてきたのは、ドンの的確な状況判断と、躊躇ない正確な指示によるものだろう。運だけでここまで生き延びることは出来ない。それが端的に表れているのが、小隊長を失って4輌の状況で最強の戦車ティーガーと遭遇した時だ。

この時、味方の3輌が立て続けに撃破される中、唯一残ったフューリーがティーガーを打ち負かした。

ドンの冷静な状況判断のもとティーガーの後ろに回り込んで、絶好のタイミングで砲撃したからだ。この戦闘は見ものだった。鈍重なイメージがある戦車が小回りを利かせたお互いの背後に喰らいつこうとする。最も装甲の薄い背後を取ろうと猛スピードで回り込む。そして、フューリーがティーガーを撃破した時の爽快感。

フューリーの仲間たち

古参の3人の部下たちがそれぞれ個性的で面白い。

キリスト教徒のバイブル。ドイツの街を占領した時ゴルドとクーアンスが女を抱いている時も一人聖書を読んでいる。一番良心的だ。

操縦手のゴルド

クーアンスは乱暴者で口も悪い見境が亡くなる時がある。自制心が効かない。しかし、性根は悪くない。ノーマンと二人っきりの時、意味もなくエマに絡んだことを素直に謝っていた。

だが個性的な面々だが、ドンには絶対逆らわない。

ノーマンが若く美しいエマとやったことに我慢がならない3人は、ドンがいるにも関わらず悪態の付き放題だった。しかし、ドンのたった一回の怒りに触れておとなしくなってしまった。ドンの存在は絶対なのだ。それだけドンの事を信頼しているのだろう。

最後の激闘

たった1輌で300人のドイツ軍相手に激闘を繰りひろげる最後のシーンが凄まじい。いくら奇襲がうまくいったとはいえ、相手は300人だ。こっちはたったの1輌。とても勝ち目はない。しかし、当初は身を隠して敵兵をやり過ごそうとした部下たちもドンの命令遂行の固い決意の前に、揺れる心のなか仲間と共にすることに決める。生き残れる可能性はゼロに近い。

仲間が一人、また一人と倒れる中ついには弾も尽き瀕死の重傷を負ったドンとノーマンの二人だけになってしまう。ドンはせめてノーマンだけは生きていてほしいと下部の脱出口がら逃れるよう指示する。戦車にこんな脱出口があったとは。

ドイツ兵が立ち去るまでじっとしていようとしていたノーマンは若いドイツ兵がに戦車下部をのぞき込まれてしまう。一瞬ノーマンとその若きドイツ兵の目が合うがドイツ兵は見逃してくれた。彼も同じように若くして戦場に駆り出されて、同じような思いでここに来させれていると思ったのだろう。心に通じ合うものがあったのだ。

そして、朝になり味方の軍に発見されたノーマンは唯一の生き残りとして英雄になる。

フューリーまとめ

作中に登場するドイツ軍戦車「ティーガーⅠ」は、世界で唯一駆動可能なボービントン戦車博物館に展示してある実車を撮影に使った。

そのため、シャーマンとティーガーの戦車バトルが凄まじい迫力の作品となっている。

この作品のようにフィクションとして見ている分にはいいが、現実に起こる戦争は悲惨この上ない。嫌々ながら強制徴募される兵士はともより、巻き添えをくう戦地の民間人の人生が滅茶苦茶になってしまう。一国の指導者の決断により何万、何十万、何百万もの人々が犠牲を被る。

現実の戦争はあってはならない。

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